全銀協発表:貸出金21ケ月連続減/中小企業の融資依存体質からの脱却、利益確保
金融機関:金余り状態最高水準に
全国銀行協会が8月5日に発表した今年7月末時点の全国銀行預金・貸出金速報によると、全国119の銀行の貸出金残高は415兆6,234億円と前年同月比0.4%減少となり、21ケ月連続で前年水準を下回りました。震災の影響や円高、電力供給不足と海外へ拠点を移す製造業などの増加で国内の資金需要の低迷は続きます。
一方で、小切手や手形を除いた実質預金残高は同比2.5%増の575兆6,523億円と58ケ月前年水準を上回り、企業や個人が手元に資金を確保する傾向が続いています。預金から貸出金を差し引いた預貸ギャップは160兆289億円となり、最高水準を維持したまま。銀行が貸し出しをしたい企業や個人には資金需要がなく、金融機関は明らかに金余りの状況となっています。
都市銀行:緊急保証23兆円融資も貸出金は減少
3メガバンクが発表した平成23年度第1四半期(平成23年4月~6月)の業績は、国内貸出の伸び悩みで苦戦しており、業務純益ベースで減益となっています。国内向けの貸出金の減少に歯止めがかからない状況のなか、フラット35など住宅ローンが好調だった地方銀行では前年同月比1,6%増、第二地銀が1.3%増となった一方で都市銀行が2.4%減少しています。
政府の金融政策である信用保証協会100%保証の景気対応緊急保証は、一般保証とは別枠で創設され、今年3月までの申込受付を9月末まで半年延長するほどニーズのある融資。景気対応緊急保証は、すでに23兆円が活用されているにもかかわらず、都市銀行の貸出金減少とは、明らかにプロパー融資の減少で中小企業には貸し出さない姿勢のように見えます。
リスケジュール申請210万件:金融庁、経営再建に金融機関へコンサル機能促進
商工リサーチによると今年3月末の全国の金融機関の中小企業金融円滑化法によるリスケジュール(条件変更)の申込件数は212万1,571件で、猶予された額は54兆941億8,800円となりました。同法は今年3月までの時限立法でしたが中小企業の根強いニーズに1年延長となりました。自見金融相は、昨年12月,延長を決めた理由として「先行きの不透明感などから今後も貸し付け条件の変更に対する需要は一定程度ある」とコメントしています。
資金繰りに困惑した企業は、リスケジュールによって出費を抑えられたものの、新たな融資も受けられず、現状で健全な経営に向けコスト削減や不採算事業の撤退、新たな成長産業への参入、転業を思案していることでしょう。金融庁でも金融機関に対し,リスケジュール承認の際には企業からの経営相談や指導、経営再建計画の策定促進などコンサルティング機能を促進する監督指針を提示ています。
急増中!リスケ終了、経営者からの相談急増
金融機関からの資金調達は、事業拡大のための設備投資や人件費など中小企業にとっては必要とされてきましたが、起業や売上減少による資金繰りの悪化から運転資金などにも利用されてきました。金融機関からの借入れはあくまで金融機関が貸す、貸さないを決めることで中小企業側では決められません。いつの間にか、いかにお金を借りるかが主体となり、いかに利益を上げるが二の次となっている感があります。
今年度に入りセントラル総合研究所には、リスケジュールが終了し約定通りの返済が始まり延長の申込みを断られる相談が急増しています。残念ながら再建計画や実現可能な事業計画書など策定に至らなかった企業が多いのも事実です。横並び社会で成長を続けた中小企業にとって他社がやらなければ作ったことのない計画書の策定は難しいのでしょう。「あと1ケ月早く相談に来てくれたら」と言うことにならぬよう、余裕を持った再生計画を早めに立てて、危機を乗り越え、安定した事業継続を図りたいものです。
[2011.8.10]
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