中小企業白書:「雇用維持」84.5%、「経営改善意欲の弱さ」が88.6%
大企業・中小企業:復旧格差明るみに
日銀が7月1日発表した6月短観(企業短期経済観測調査)によると、 大企業・製造業のDI(業况判断指数)はマイナス9と15ケ月ぶりに マイナスとなりましたが、3ケ月後にはプラスに転じ、震災被害から着実に立ち直るとしています。
日銀の白川総裁は6月28日、オランダの講演で震災で減産となった製造業の活動について「生産は徐々に回復 し、7~9月には震災前の水準に復帰する」と述べています。大企業で は政府の金融支援、セーフティネット5号や復興緊急保証によって設備などの復旧が進み、サプライチェーン(供給網)は早期復旧を果たしました。生産の巻き返しに製造業では、増産体制計画が次々に発表されるものの、被災地では中小企業の被害状況が徐々に明るみになってきました。
被災地沿岸部の中小企業、18,560社中、把握できたのはわずか6,142社5割が全壊
経済産業省中小企業庁は、例年4月下旬に閣議決定する「中小企業白書」を、震災の影響を盛り込むため約2ケ月遅らせ7月1日に公表しました。中小企業は震災でも産業のサプライチェーンを担い、地域の産業、住民生活を支えることが再認識されており、中小企業の持つ技術や雇用を守るため、事業再生、地域密着型金融など施策の必要性が載せられました。
震災による被災状況では、青森、岩手、宮城、福島4県の商工会が把握している太平洋沿岸部の会員企業18,560社のうち把握できたのはわずか6,142社。その54.4%に当たる3,344社が津波などにより建家・家屋が全壊となり、内陸部の48,596社も82.7%に当たる6,256社が一部破損となっています。両地域とも被害なしと回答したのはゼロで震災により何かしらの影響を受けたことになります。今回の調査では福島沿岸部からは原発事故の影響によりほとんど回答が得られていないなど、被害状況はさらに大きくなると予想されます。
事業再生で実現「雇用維持」84.5%、「経営改善意欲の弱さ」が88.6%
中小企業白書によると、震災による国内需要の収縮で成長産業へ起業・転業やグローバル競争に踏み出せない中小企業が存在することから必要な施策が必要とあります。大企業では政府の経済政策や金融支援で海外市場を拡大させ、豊富な手元資金で海外企業をM&A(企業の合併・買収)で国際シェア上昇を狙うも、中小企業ではその恩恵を受けられないケースが多く見られます。
同白書の事業再生調査では、再生により実現できたこととして「従業員の雇用維持」が84.5%と最も多く、「顧客満足」が58.9%、「経営権の維持」が53.7%と続きます。また再生支援の継続で障害になる要素として「経営者の経営改善に対する意欲の弱さ」が88.6%と9割近くに上り、「経営実態の把握が困難」が60.7%、「金融機関側の支援ノウハウ不足」40.8%と続き、セントラル総合研究所へ相談にこられる経営者とほぼ一致します。
平成23年度政府中小支援策:意欲ある中小企業向けに
高齢化社会を迎え国内需要は縮小し、円高や電力供給不足、さらに自由貿易交渉の先送りなど大企業は海外へ拠点を移す動きが活発となっています。中小企業は大企業に付いていくか、転業を図り、成長産業へ起業・転業に軸足を移さなくてはならない時代です。中小企業白書の「平成23年度中小企業施策」の概要では、「意欲のある中小企業を伸ばす施策」とあります。新たな融資でも「再生可能な中小企業」には信用保証協会の保証がつく可能性が高くなるものです。
中小企業の多くは、この先どうなるか分からないから改善計画も作成できず、意欲も湧かない姿が見られます。先がわかれば何をしなくてはいけないか改善へ向け行動が活発となり、強い意志を持つことが出来ます。経営者がこうなれば再生できたもの同然です。うつむいて相談にこられた経営者がたった2時間の面談で笑顔になり、胸を張って帰るように。わからないことは知識豊富な専門家に任せ、再生に向け必要な支援は政府支援を活用し、被災しても経営者は目標に向け強い意志で事業を支えましょう。
[2011.7.6]
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