電力使用量の「見える化」で電力を企業へ融通!エネルギー政策の見直しはビックチャンス
震災後の計画停電で経済損失:GDPを1%押し下げ
東日本大震災による福島原発事故を受け、東京・東北電力管内での電力供給力は急減。政府はやむなく緊急措置として計画停電を了承、実施しました。その結果、交通インフラは運休や、運転本数の減少。企業、店舗では営業時間の短縮や休業に自宅待機。スポーツなどのイベントは延期・中止など経済に多大な影響を与え、セントラル総合研究所へも、生産減少など製造業から悲痛な相談が多く寄せられました。
製造現場の3時間停電は一日の生産が止まる結果を招いた
東京電力管内のGDP(国内総生産)の合計は、国内の約40%を占めており、計画停電の実施でGDPが1%近く押し下げられたと見られています。製造業などでは、たった3時間の停電でも前後の点検、準備など倍以上の時間が取られ、実質生産が止まる業種もありました。政府は、夏に向け産業活動に多大な弊害となる計画停電を避ける代わりに15%の節電を企業、家庭へ呼びかけ、官民一体となって難局から脱するべく訴えます。
夏の節電15%の企業への影響:7割「変らない」も2割は「生産・販売減少」
サプライチェーン(供給体制)は、復旧に向かい先行きの供給も見え始めてきましたが、産業界では、ここからが節電との戦いとなります。震災を受け復興に向け、生産体制や操業活動への影響を最小限に抑えなければなりません。生産体制が減少すれば、国内のみならず中国や韓国、台湾などの企業に受注が奪われ、日本経済の足かせにもなりまねません。
経済同友会が6月14日に発表した、会員経営者対象の「夏場の節電対策について」のアンケートによると、政府が目標としている最大使用電力量、前年比15%削減について86%の企業が「達成可能」と答えています。また節電による生産や販売への影響については、7割が「変らない」と回答する一方、「減少する」と回答したのは2割弱にとどまりました。有効回答が得られた経営者は260人。その2割の約52社に影響が出ることは、多いと見るか少ないか、節電体制の強化で需要企業へ電力を融通したいものです。
オイルショック(昭和48年)停電は石油依存度8割、今回の節電は猛暑のピークの不足
昭和48年、日本のエネルギーは石油依存度が8割を占めていた時代、オイルショックの影響を受けて大規模な停電を経験しました。夜中の店の営業やテレビ番組は消えましたが、今回の15%節電要請は、オイルショック時のような総量=kWhの抑制でなく、気温が最大となるピーク=kWの抑制が求められています。昨年の猛暑のピーク時には供給量が6,000万kWに達し、現在の東京電力の供給量は5,380万KWと10.3%不足。東北電力管内でも7.4%不足となっています。より一層の節電への意識の高まりが必要となりますが、電力供給不足のピンチに、その裏ではビジネスチャンスとも捉えられる新しいサービスが始まります。
電力供給危機の裏にビジネスチャンス:クラウドサービス
原発事故でエネルギー政策見直し「電力見える化」「スマートグリッド」
東芝は、工場やビルの各拠点で1分~30分周期で電力使用量をデータセンターへ送信し、自動集計して可視化する「使用電力見える化クラウドサービス」を6月に始めるとしています。可視化によって経営者や電力管理者からの節電指示や操業計画の作成を支援。東京、東北電力管内の約40の事業所でサービスを順次導入するとしています。
エネルギー危機の日本・中国、エネルギー産業はこれからのビジネスチャンス
原発事故によって日本のエネルギー政策は見直しを迫られ、再生可能エネルギーを積極的に押し進める試みに、送配電網と情報通信技術が融合するスマートグリッド構想。さらにはEV(電気自動車)の蓄電活用など一気に加速が予測されます。危機的状況化の中、日本のエネルギー産業はビジネスチャンスともなり、大きく変革しようとしています。
●関連記事:業の変革:ライバルが手を組むIT産業・スマホ急伸、クラウド普及の需要とは[2011.6.11配信]
●関連記事:東芝、ランディス・ギア買収で一気にスマートグリッド普及へ:需要急拡大・住宅用太陽光発電システム[2011.5.26配信]
[2011.6.22]
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