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レアアース価格再急騰に脱中国!経産省技術開発支援:代替の先端技術に補助金87億円

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中国独占販売、値上げ幅は1年で40倍にも
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日本は約3万トンのレアアースを輸入しており、その9割を中国に依存しています。中国は独禁法も関係なく売り手市場で価格が操作され、価格は中国の輸出規制で昨年の4月から5~40倍に値上げされました。これは大問題です。
経済産業省は6月3日、ハイテクノロジー製品に欠かす事の出来ないレアアース(希土類)の価格が中国で高騰したことによる措置として、レアアースの使用低減やリサイクルをして利用する企業に対して補助金交付事業を発表しました。同省では補助金総額87億円の予算を計上、企業が負担する予算を合わせ事業規模は300億円と見込んでおり、国が約3割を負担し、中国からの輸入依存脱却を目指します。

中国依存の解消、補助金交付で中国のレアアース依存抜け出す
補助金交付事業では、レアアースのほか、使用量の多い研磨剤や自動車に使用する添加剤、タングステンなどの関連技術も対象としています。レアアースは、スマートフォンやタブレット型情報端末、EV(電気自動車)など、多くの自動車や電機産業の精密機器で使用されています。例えば、ハイブリット車のトヨタの「プリウス」では1台当たり1.2kg のレアアースが使われています。その世界産出量の約97%は中国が握っているのです。昨年の中国輸出規制による値上がりは世界の先端企業にショックを与えました。調達コストの上昇が製品価格にも反映され、ハイテク製品の価格競争力に多大な影響を及ぼすばかりか、もしその調達を拒絶されれば、産業そのものが停止します。
震災によるサプライチェーン(供給体制)の混乱で日本の部品メーカーはリスク分散に生産工場の複数化や、部品の共通化などの対策が急いでいます。日本はレアアース代替技術の開発や、効率的なリサイクル、調達の分散によって中国のレアアース支配から抜け出さねばなりません。


世界の産出量の97%が中国:高い需要から今年8月に品切れ!?
中国初の金融・経済・ビジネス日刊紙の第一財経日報は5月31日、「中国のレアアースは今年8月にも通年枠を超過」と報じました。中国の全省で今年1月~4月に産出されたレアアースは5,694トンと前年同期比で3割増となっています。中国有数のレアアースの産地である江西省でのレアアース産出量は昨年1年間で約2万トンで今年1月~3月の売上高は約618億円で前年比83%増と需要の高まりに歯止めがきかない状況です。
 
中国の産出規制、このままでは8月で産出枠オーバー
中国では昨年、レアアースの輸出を強化、中央政府が年間の産出枠を定めており、今のハイペース が続けば8月には今年の産出枠を超過するとみています。中国の中央政府、地方政府とも関連業者に対して産出枠を順守する方針を打ち出しており、超過すればさらなる価格高騰が日本に押し寄せる可能性が高まりました。
一方、政策あれば対策あり、という商魂たくましい中国です。産出枠の規制による価格高騰背景に、中国内では採掘を巡る不正、権益を売り物にした詐欺的なブローカー話などが跋扈しそうですので、我々も注意が必要でしょう。

米トーマス・フリードマン警告:中国・ルールを破るのは自殺行為
レアアースの埋蔵国は中国だけでなく米国やオーストラリア、カザフスタン、モンゴルなどにも存在し、昨年の意地悪な輸出規制で各国はすでに採掘に乗り出しており、平成24年までには中国抜きで供給できる体制が整えられています。中国はレアアースの一方的な値上げや輸出規制など外交カードにも活用しているようですが、今年も混乱が起きれば他の産出国の供給体制も急ピッチに加速することでしょう。昨年のレアアース・ショック時には、9月に大畠前経済産業相がカザフスタン政府高官と、10月には菅首相がモンゴル首相とレアアースの開発・生産で協力する意向を示しましたが、中国はこの動きを察知したのか9月末に日本向けレアアースの輸出手続きを再開しています。世界の需要国を困らせ経済大国世界1位を目指すのか今後の価格推移に注視したいものです。
日本や米国など先進国が中国に困らされたのはレアアース問題だけではなく、過去にも昭和53年、故鄧小平氏の改革開放を唱えて以降、中国政府は都度法律を変え中国への投資を無駄にしてきた経緯があります。米国のジャーナリストでピューリッツァー賞を3度受賞したトーマス・フリードマン氏は、「現在の中国は完全にグローバル資本主義社会に組み込まれているので、ルールをラディカルに破ることはできない。それは自殺行為になるからだ」とビジネスモラルを訴えます。

安さの秘密:レアアース採掘時の放射性物質は放棄
世界各国で埋蔵されるレアアースが中国頼りになるのには何よりも価格にあります。人件費の安さはもちろんですが、レアアース採掘の鉱山も奥深く掘る必要もなく採掘でき、その分のコストが反映されないため低価格で他国を圧倒しています。さらに諸外国が手を出さない理由に採掘、生産の際に出る放射性物質のウランなどの後処理に多額の費用がかかると言われています。そのため、
コスト高となることから、中国の安いレアアースを輸入したほうが得策と中国頼りになっている背景があります。では、中国ではレアアース採掘の際の放射性物質はそのまま放っておかされているのかと疑問も残ります。
英国の日刊紙・ファイナンシャル・タイムズは5月31日、ブラジルの科学技術相が世界最大の鉄鉱石メジャー、ヴァーレ社がレアアース産業に進出と報じました。中国の輸出規制後の値上がりで需要の高いレアアースを供給し、中国と価格競争を繰り広げるとあります。中国包囲網ならぬレアアース供給体制は世界で繰り広げられています。資源の乏しい日本は先端技術でカバーするしかありません。採掘技術も進歩がみられ、コストに反映されないような努力が各国でなされるでしょう。日本は官民学一体となってレアアースの代替・低減技術、リサイクル技術を研究・開発し、諸外国へ輸出し「技術大国」を不動のものとしなければなりません。「もったいない」の精神がキーワードです。
 
レアアース代替新技術なら大企業、中小ベンチャーにもチャンス
新技術ならば、大企業のみならず、中小ベンチャー企業にとっても大きなチャンスがあります。国内での資金調達に苦しんでいる技術系の中小ベンチャーでも、しかるべき技術評価と事業性評価を両面で受けることで、製品化への投資や資金調達を海外から受けることができるのです。中小ベンチャーで新技術を売りたい方々、セントラル総研ではそうしたお手伝いを積極的にしておりますので、どうぞ、ご相談ください。


[2011.6.7]

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八木宏之プロフィール
セントラル総研・八木宏之
株式会社セントラル総合研究所 代表取締役社長。連帯保証人制度見直し協議会発起人。NPO法人自殺対策支援センターLIFE LINK賛同者。
昭和34年、東京都生まれ。大学卒業後、銀行系リース会社で全国屈指の債権回収担当者として活躍。平成8年、経営者への財務アドバイスなどの経験を活かし、事業再生専門コンサルティング会社、株式会社セントラル総合研究所を設立。以来14年間、中小企業の「事業再生と敗者復活」を掲げ、9000件近い相談に応えてきた。
事業再生に関わる著書も多く出版。平成22年5月新刊『たかが赤字でくよくよするな!』(大和書房)をはじめ、『7000社を救ったプロの事業再生術』(日本実業出版)、『債務者が主導権を握る事業再生 経営者なら諦めるな』(かんき出版)、平成14年、『借りたカネは返すな!』(アスコム)はシリーズ55万部を記録。その他実用書など数冊を出版している。
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