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輸出積極的に!75%:拠点脱中国加速、ASEANへ/潜在チャイナリスク回避

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海外事業展開アンケート「輸出を積極的に」75%
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JETRO(日本貿易振興機構)が3月18日公表した「平成22年度日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査概要」を見ると、中小企業の輸出に対する積極姿勢が示されています。調査対象の企業1,002社(うち中小企業591社)中、「輸出の拡大を図る」企業が69.7%で、「輸出していないが今後輸出したい」という企業が6,9%とあります。中小企業の輸出への積極性は合わせて74,6%と、大企業の65,5%を上回っています。「輸出を行う上で必要だと思われること」では、「輸出先市場の需要、ニーズ」が最も多く67.0%を占め、「現地での販売網、流通網の拡充」が56,0%、「関税率、輸入規制の情報」が53,3%と続きます。

優遇税率、有利なFTA利用企業、わずか3社に1社
輸出先での需要や販売網の整備は、政府や関連団体、自治体などによって見本市や商談会などが国内、現地で開催され、需給のマッチングが実施されています。優遇税率や産業ごとの規制は、FTA(自由貿易協定)を各国と締結し、貿易上の障壁が取り除かれています。現在、日本がFTAを発効しているのは、タイ、インドネシア、フィリピン、ベトナム、マレーシア、メキシコ、チリ、スイスとASEAN(東南アジア諸国連合)でFTAを利用している企業は580社で利用率は31,4%。FTA優遇税率を利用する企業は、平成18年の13,3%から増加推移にあるものの、昨年でも3社に1社しか利用されていないのが現状のようです。

FTA利用:チリ35%、タイ29%/FTAを知らない:28%
国別のFTA利用状況ではチリが最も多く、輸出を行う102社中36社で35,3%の企業が優遇税率の恩恵を受け、タイが470社中137社で29,1%と続いています。FTAの利用を促し、輸出拡大を図りたいところですが、FTAを利用しない中小企業を見ると、「もともと関税はなく無税なので使用しない」という企業が20,8%。「FTAを知らない」が27,9%と、優遇税率の利用を促したいところです。JETROオフィシャルサイトでは、各国の統計や輸出の際の規制、注意点、市場での需要情報が詳細に発信されています。企業が輸出の際に一番欲しい情報、「需要・ニーズ」は、月ごと、季節ごとに変化します。今後は、モバイルでも、タブレット型端末でも確認できるようリアルタイムでの情報更新を期待したいところです。

FTA利用:ASEAN経由で中国、韓国へ非関税で輸出
先月、「企業の輸出、ASEANを拠点にFTA活用。アジア向け自動車など2倍」という報道がありました。FTAを結んでいない消費大国・中国や、韓国、インドなどへ輸出する際、日本から輸出するよりも、ASEANと中国、ASEANと韓国、ASEANとインドと第三国間のFTAを活用した方が関税面で有利になるといます。中国や韓国では約9割の品目が非関税となっています。
日産自動車はタイとインドでマーチを生産。FTAを利用して部品を相互に融通し、最もコスト競争力のある地域から部品を調達すると言います。
▼ASEAN加盟国と人口(単位:万人):インドネシア(23,845)、フィリピン(8,785)、ベトナム(8,423)、タイ(6,486)、ミャンマー(5,430/2002年)、マレーシア(2,613)、カンボジア(1,380)、ラオス(560)、シンガポール(435)、ブルネイ(35)

ビジネスに期待する国はTPP加盟国に中国
製造業などでは、ASEANのFTAを利用し、優遇税率で海外で日本の製品が流通し、取引されています。「ヒト、モノ、カネ」が日本の国内に流れてこないのです。日本のFTAやEPA(経済連携協定)交渉は、韓国に完全に遅れをとり、国内の雇用さえも脅かそうとしています。JETROの調査では、第三国間のASEANの利用は、198社中64社で32.3%。とくにASEANとインドでは、「利用」、「利用検討中」を合わせると50,5%と5割以上の企業が優遇税率に期待しているのです。また、「今後、日本がどの地域と組めばビジネスはプラスになるか」では、TPP(環太平洋経済連携協定)が48,4%。次いで中国が47,6%、EUが32,5%と続き、5割近い企業がTPP、中国に期待しています。

TPP参加国はすでに5回の交渉、遅れて参加の日本は不利な条件
TPPは、6月をめどに交渉の否か決定するとしていますが、TPPの締結は今年11月。参加9ケ国のTPP交渉会合はすでに先月、5回目を終え、参加が決まっても日本は条件をのむだけになりかねません。ここでもまた日本は各国との貿易から取り残されているのです。
1,002社中、82,5%がすでに輸出に従事し、このうち68,9%の企業が中国に輸出しています。さらに第三国間FTAでASEANと中国の「利用」は、287社中56社の19,5%と「利用検討」の23,3%と合わせると42,8%となるなど、優遇税率が適用される産業において中国への輸出は増加が見込まれます。

中国依存の潜在リスク:レアアースでの一方的な規制の教訓
製造業などの生産拠点数、販売拠点数でも中国は他国を圧倒。海外に拠点を持つ663社の76,3%にあたる企業が中国に拠点を設け、続く米国の44,2%、タイの40,7%を大きく引き離しています。平成20年から22年までの中国、日系企業の拠点数の推移を見ると、販売拠点は増加傾向にあるものの、生産拠点は減少傾向にあります。中国の日系企業は、昨年の中国・レアアース輸出の一方的な規制を教訓に、一国に頼らないリスク分散傾向にあるようです。世界の工場とまで言われた中国は、人民元引き上げや、所得格差による国民不満。この不満に対応する当局の人件費高騰など潜在するリスクは他にもあると言われています。
 
「脱中国」の流れ49%⇒32%/ASEANへ移る企業は30%⇒33%増加
JETROの調査では、中国へ拠点を移す企業の構成比は平成18年の49,4%から22年の32,8%に減少。かわってASEAN諸国へ拠点を移す日本企業は30,0%から33,6%と増加、中国を上回りました。消費を伸ばすための販売拠点を増やし、生産拠点を中国よりさらに人件費の安いASEAN諸国などへ移す「脱中国」の流れが増加しています。世界の貿易を無視したレアアース輸出規制は、日本ならず世界の関連産業にも大打撃を与えました。このような動きは海外の企業も同様に起きているでしょう。FTAでは日本は取り残され、国内市場は空洞化、雇用をも奪われました。「雇用!」と叫ぶのならTPPで開国、国内生産品を海外に輸出拡大、国内市場に活況を取り戻し多大なる雇用創出に繋げたいものです。

[2011.3.12]

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八木宏之プロフィール
セントラル総研・八木宏之
株式会社セントラル総合研究所 代表取締役社長。連帯保証人制度見直し協議会発起人。NPO法人自殺対策支援センターLIFE LINK賛同者。
昭和34年、東京都生まれ。大学卒業後、銀行系リース会社で全国屈指の債権回収担当者として活躍。平成8年、経営者への財務アドバイスなどの経験を活かし、事業再生専門コンサルティング会社、株式会社セントラル総合研究所を設立。以来14年間、中小企業の「事業再生と敗者復活」を掲げ、9000件近い相談に応えてきた。
事業再生に関わる著書も多く出版。平成22年5月新刊『たかが赤字でくよくよするな!』(大和書房)をはじめ、『7000社を救ったプロの事業再生術』(日本実業出版)、『債務者が主導権を握る事業再生 経営者なら諦めるな』(かんき出版)、平成14年、『借りたカネは返すな!』(アスコム)はシリーズ55万部を記録。その他実用書など数冊を出版している。
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