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MBOラッシュ:幻冬舎「出版社上場向いてない」/日証協会長「残念な傾向」!

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幻冬舎:経営判断の自由を求め上場廃止へ
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JASDAQ上場の出版社、幻冬舎(本社:東京都渋谷区千駄ヶ谷4−9−7 代表取締役社長:見城徹)は、2月15日に臨時株主総会を開催し、昨年10月に発表していたMBO(Management Buy-Out:経営陣による企業買収)による非上場が可決されました。これにより、幻冬舎は3月16日を以って上場廃止となる予定です。
見城社長は、「出版社が上場にあまり向いていないことが身に染みた」と株主総会の後、語りました。しかし、幻冬舎といえば、この厳しい出版不況の中にあっても、本来の書籍事業で増収増益を示している数少ない出版社です。2月8日に発表された今年度決算によると、売上高は第3四半期までで前年同期比1.4%増の94億9,000万円で営業利益は同比34.8%増の14億7,000万円、経常利益が同比33.8%増の14億9,500万円、四半期純利益が同比26.1%増の7億7,300万円と、堅実な業績が際立っています。利益を伸ばしているにもかかわらず、あえて上場廃止という選択をするのには、「経営の自由度を高める」という目的があります。

MBO成立、これからは株主の意見には左右されない
出版業界全体は、不振が長引いていることに加え、昨年から電子書籍が普及し始め、抜本的な構造改革が求められていることは、出版業界全体の共通した認識です。幻冬舎の経営陣は、「構造改革に向けた意思決定を迅速に行うためには、経営と資本を一体化して再スタートすることが必要」と判断したのです。上場を廃止することで、株主の意見に左右されずに長期的な経営戦略を立案、実行することが可能になるのです。情報の公開も限定できるため外部からはその戦略も読みにくくなり、競合を出し抜くということも小技も出しやすくなるでしょう。
牛島信著の企業法律小説「MBO」といえば幻冬舎のヒット作品のひとつ。平成15年発行の文庫ですが、同社のMBO成立によって再び売上を伸ばすかもしれません。

今年、すでに11社がMBOで上場廃止に
幻冬舎に限らず、「あえての上場廃止」がこのところ相次ぎ、報道を賑わしています。TSUTAYAを擁するCCC(Culture Convenience Club Co.,Ltd. 代表取締役社長兼CEO:増田宗昭)や引越大手のアート引越しセンター(アートコーポレーション株式会社 代表取締役社長:寺田千代乃)も、MBOによる非上場化を発表し、大きく報じられました。平成23年に上場廃止見込みとなる発表を行った企業は、2月7日公表分までで12社にも上ります。このうち上場廃止基準に抵触して退場となったのはただ1社のみで、9割以上となる11社は企業の判断で上場廃止に踏み切るということです。さらにその半数以上がMBOによるもので、今後も同様に上場廃止を行う企業は出てくると予測されます。

投資家:強引なMBO強要はモラルハザード
MBOは、投資家の立場から見ると株価の高いときに購入した株が、それよりも安く提示された価格で売却を迫られるなど、損失を追うケースもしばし見られるようです。強引なMBOの広がりは、モラルハザードをも引き起こしかねないと懸念されます。
幻冬舎の上場廃止が決定した2月15日、日本証券業協会(東京都中央区日本橋茅場町1ー5ー8 前哲夫会長)の前会長は、MBOによる上場企業の非公開化が増えていることについて「残念な傾向」と述べています。MBOに踏み切る企業が株式上場と引き換えに手にした「自由」によってひとり勝ちに走るのではなく、各業界の活性化の起爆剤となり、縮小する国内産業を発展させて欲しいものです。


[2011.2.26]

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八木宏之プロフィール
セントラル総研・八木宏之
株式会社セントラル総合研究所 代表取締役社長。連帯保証人制度見直し協議会発起人。NPO法人自殺対策支援センターLIFE LINK賛同者。
昭和34年、東京都生まれ。大学卒業後、銀行系リース会社で全国屈指の債権回収担当者として活躍。平成8年、経営者への財務アドバイスなどの経験を活かし、事業再生専門コンサルティング会社、株式会社セントラル総合研究所を設立。以来14年間、中小企業の「事業再生と敗者復活」を掲げ、9000件近い相談に応えてきた。
事業再生に関わる著書も多く出版。平成22年5月新刊『たかが赤字でくよくよするな!』(大和書房)をはじめ、『7000社を救ったプロの事業再生術』(日本実業出版)、『債務者が主導権を握る事業再生 経営者なら諦めるな』(かんき出版)、平成14年、『借りたカネは返すな!』(アスコム)はシリーズ55万部を記録。その他実用書など数冊を出版している。
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