介護サービス・有料老人ホーム業売上げ2倍、増収企業8割超え
入所希望42万人、介護施設増設自由化へ
政府は平成22年6月の閣議で、新成長戦略として医療・介護産業を平成32年に50兆円を目指すとしています。今後も少子高齢化が続き、とくに介護関連産業では今後大幅な増加も見込まれ、関連事業者の参入や異業種からの転業など、動向が注目される産業です。今まさに特別養護老人ホームへの入所を希望する待機者は約42万人と言われる中、施設の整備は順調とは言えません。
厚生労働省は6月、介護サービスが特別養護老人ホームなどの施設に集中するのを避けるため、施設数を一定の範囲に抑える規制を平成24年に撤廃することを決めました。長妻厚生労働相は「施設の必要性は非常に高く、地方自治体で判断できるよう決めた」とコメントしています。規制撤廃後は、市町村が地域の事情に合わせて自由に介護施設を整備できるようになり、需要に応対できるようになるでしょう。
売上げ10億円以上の企業、9割が黒字
帝国データバンクが12月27日発表した「介護サービス・有料老人ホーム業の経営実態調査」によると、平成21年度に売上高が明らかになった介護サービス・有料老人ホーム業者数は全国に7、022社あり、平成17年度の2,733社から156.9%増、約2、5倍に急増しました。また売上総額も4兆2,122億100万円と17年度の2兆1,650億3,100万円から94.6%増の約2倍と大幅に増加しました。業歴では、「5~10年未満」が27.8%と最も多く、平成12年の介護保険制度の導入で新たに参入、転業した企業が多いようです。
7、022社中、平成21年度の売上げが10億円以上の企業は13.4%の942社。このうち当期純損益が明らかな630社を見ると構成比92.4%の582社が黒字企業でした。この中の50.5%の318社が2期連続黒字と堅調な業績を上げた企業が目立ちました。一方、赤字企業は7.6%の48社にとどまりました。
介護保険受給者410万人の大規模市場
平成12年、介護を必要とする人を社会全体で支える介護保険制度がスタート。開始以来、介護サービス・有料老人ホーム業は急増しました。さらに平成24年には総量規制が撤廃され、より需要が大きく見込まれ、参入、転業する企業が増加すると予想されます。
厚生労働省では、介護保険制度の介護報酬の改定など運営・政策立案の基礎となる「介護給付費実態調査月報」を毎月公表。同省が12月21日公表した10月の月報によると、全国の介護保険受給者数は、「介護予防サービス」で86万9、000人。「介護サービス」では323万6、200人となっています。また受給者一人当たりの費用は、「介護予防サービス」で3万9,700円。「介護サービス」で18万4,300円と受給者数、費用は年々増加傾向にあります。
介護職員、月額報酬15,000円アップ
平成19年、コムスンの介護報酬不正請求事件によって介護職員の給与水準が報道され、所得の低さが明らかになりました。これを受けて、厚生労働省は平成21年4月、介護職員の給与水準を上げる目的で始めて介護報酬の引き上げ支援を決めました。同省は今年20日、「介護職員の処遇改善状況」を発表。民主党が昨年、マニフェストで掲げた「月額4万円引き上げ」には届かないものの、今年6月までの1年間で平均1万5,160円増加しました。処遇改善交付金は、月1万5,000増に相当する額を国費で介護サービス事業者へ交付するもので、今年、事業者の87%が申請しています。
政府の新成長戦略に掲げる介護産業は、金融・経済支援などによって円滑に新規参入、転業できる産業でしょう。11月の失業率は前月から横ばいの5.1%と高い推移のまま。今春卒業の大学生は大企業指向で就職が決まらず、専門学校へ通うという報道もありました。介護サービス産業は人手不足と言われるなか、施設設置の規制緩和、介護職員の所得改善など業界あげて環境も整いつつあります。今こそ介護産業に新規参入、転業を考えるときでしょう。
[2011.1.4]
トラックバック(0)
このブログ記事を参照しているブログ一覧: 介護サービス・有料老人ホーム業売上げ2倍、増収企業8割超え
このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.h-yagi.jp/mt5/mt-tb.cgi/271
コメントする