金融庁:金融産業の活性化プラン、政府:元気な日本復活、経産省:新成長戦略産業へ参入・転業
連帯保証人撤廃で健全な資金調達へ
金融庁は12月24日、「金融資本市場及び金融産業の活性化等のためのアクションプラン~新成長戦略の実現に向けて~」を公表しました。アクションプランは、「中小企業や新興企業などへの適切な資金供給」、「アジアと日本をつなぐ金融」、「デリバティブ取引や投資信託など国民が安心して資産を活用できる環境の整備」の3点を中心に今後取り組むとしています。この中でも中小企業に対する「きめ細かで円滑な資金供給」は、金融機関等がコンサルティング機能を発揮し、中小企業の経営改善や事業拡大支援を積極的に取り組むとしています。また、経営者以外の第三者による個人連帯保証などの見直しについて、関係省庁とも連携しつつ、必要な監督上の着眼点について検討を行い、今年度中にも監督指針の改正を行うとありました。セントラル総合研究所では連帯保証、個人保証に関して撤廃を訴え続けてきました。いよいよ今年度、改正が行われるようです。
対象企業拡大:コミットメントライン
政府は6月18日に閣議決定した「新成長戦略 ~元気な日本復活のシナリオ~」において「金融戦略」を7つの戦略の1つとして位置づけ、金融の役割を2つ上げています。その役割は、「家計に適切な投資機会を提供し、企業などに多様な資金調達手段を提供する」、「成長著しいアジア市場などで金融業が成長産業として発展、付加価値を高めること」としています。拡充が期待される借換え保証など新たな中小企業への金融支援で、金融業を牽引役に日本の産業を新しい市場、新たな産業へ導いて欲しいものです。
金融庁はすでに12月6日、中小企業の金融支援に、必要なときにいつでも金融機関から一定資金の借入ができる「コミットメントライン(融資枠契約)」を利用できるよう法改正に取り組んでいると公表しています。コミットメントラインは、資本金3億円超えの企業に限られていましたが、純資産額10億円以上の企業まで対象を広げる方針で、来年秋ごろの実施を目指しています。
新成長産業への融資が増加、新規参入、転業か
来年以降も政府の金融支援が期待されますが、年末を迎え資金需要から信用保証協会が100%保証する景気対応緊急保証(セーフティネット保証)の利用が増えていると報道がありました。信用保証協会の12月の保証承諾実績は12月21日現在、約5,700億円と2ケ月連続して前年同月を上回りそうです。12月の緊急保証は円高が急激に進んだ9月の約7,300億円に迫る勢いでが、経済産業省では「9,000億円前後に増える可能性もある」と見ているようです。経済産業省によると、公共事業の減少で建設業の利用が引き続き多いほか、これまで利用が少なかった医療・福祉産業からの利用が目立つようになっているようです。
中小企業庁では、年末の資金繰りに借換え保証や条件変更、セーフティネット貸付など公的金融機関の各種制度の活用を積極的に推進。中小企業の資金繰り支援に日本政策金融公庫や沖縄振興開発金融公庫、商工組合中央金庫、信用保証協会など12月30日まで問合せを受け付けるとしています。
内需型企業への融資は減少
年末は中小企業にとって資金需要が拡大し、資金繰りを悪化させる時期にあります。信用保証協会の緊急保証は、リーマンショック後の平成20年12月には約3兆1,000億円。平成21年12月は約1兆円と減少傾向にあり、今年12月は多くて9,000億円と経済産業省はみており、「最悪期を脱したのでは」との見方も出ているようです。しかし、中小企業の現実は、モラトリアム法で条件変更し負担を先送りにし、借換え保証など新たな融資支援で生き延びているのが現状でしょう。
財務省が12月24日公表した来年度の財政投資計画では、今年度から18.8%減の14兆9,000億円と減少。さらに企業の金融支援は40.0%減の4兆9,000億円としています。一方でJBIC(国際協力銀行)などへの海外投融資支援では38.1%増の2兆円を確保しています。内需型中小企業にとっては資金調達がさらに厳しくなるでしょう。利益を確保し黒字決算を迎えなければ企業として成り立ちません。業況が横ばい、悪化であれば急成長中のアジア新興国へ市場を求めるか、政府の新成長戦略産業へ参入、転業するか企業経営者の決断の時です。
[2010.12.27]
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