日本政策金融公庫:転業・新規事業向け融資増大、利用件数58%増
新規事業に向けた融資58%増
日本政策金融公庫(金融公庫)の「挑戦支援資本強化特例制度」の平成22年度上半期(4月~9月)の利用件数が前年同期比58%増の187件となったと報道がありました。金額では9%増の121億円と、従来までの事業再生向けでなく新事業向けの利用が増えています。製造業の海外移転、少子高齢化の国内市場の縮小で企業では新たな事業へ参入し、転業によって新しい収益を図る準備が進んでいます。
挑戦支援資本強化特例制度
新事業を展開する企業にとって設備投資など初期投資の資金調達は、実績もなく民間の金融機関からの借入は難しいものです。金融公庫の新規事業向け融資は、こうしたすき間を埋める形で伸長しました。金融公庫では、本業では利益が見込めずに、新しい収益のため事業の多角化を図る中小企業が多くなっていると言います。また、ゼロの状態から新たに事業を始めようとする場合、事業実績もなくリスクも大きいため、民間の金融機関では融資できない場合が多く、金融公庫の新規事業向け融資は新規事業推進する形で利用されています。
2ケ月連続10億円超え、新規就農者へも融資可
金融公庫では平成22年10月から「農業改良資金」の融資も行っていますが、11月末時点で73件、11億4,000万円と2ケ月連続して10億円の大台を超えました。融資対象は規模の拡大など経営改善だけでなく、農産物の付加価値を高める加工事業や直販など第6次産業への挑戦・転業も対象で、その数も増えてます。「農業改良資金」は、10月に融資機関が都道府県から金融公庫へ変更され、都道府県の農業改良措置(貸付資格)の認定を受ける必要はあるものの、12月8日時点で約350件の借入相談が持ち込まれています。金融公庫では、認定農業者の他に新規就農者など農商工等連携促進法に基づき国の認定を受けた食品加工・販売業者など、意欲のある多様な農業者にも融資を行うとしています。
地域活性化に経産省補助金支援
新規事業、転業支援は経済産業省でも行われ、12月3日から24日まで対象者を公募しています。平成22年度新事業活動促進支援補助金は、中小企業が新しい商品、サービスの開発などによる事業に対して支援するものです。地域の資源を利用した商品や、サービスの開発に必要な市場調査や試作、展示会費用、複数の中小企業が共同して新事業に関わる研究会、試作、調査費用。中小企業と農林漁業者が連携して行う新商品など、開発に関わる費用が補助されます。経済産業省では、地域の優れた農林水産物や鉱工業品、技術、資源等を活用し、新商品やサービスを開発することで、地域経済の活性化や地域の中小企業に新興を寄与するとしています。
人材サービス業、すでに事業多角化に加速
国内市場が縮小傾向のなか、人材サービス会社が収益の多様化を加速させていると報道がありました。企業の雇用抑制から求人分野では厳しい状況が続き、生き残りをかけての新規事業への取組みがされています。軽作業員を派遣するエスプールは、農業を通じ障害者の雇用を支援するサービスに参入、ビニールハウスを建設し障害者によってサラダ菜を生産。この設備を企業に販売するとして既にレストランチェーンなど3社が内定済みだそうです。テンプホールディングスは経理・総務受託サービスに。ヒューマンホールディングスは介護デイサービスに。マイスターエンジニアリングでは太陽光発電設備販売など、人材サービス各社が新たな事業、収益確保に動き出しています。
「転業」推進、政府バックアップ整う
厚生労働省によると平成21年度の派遣労働者数は前年度比24%減の302万人。人材サービス会社は市場縮小で受託型サービスに軸足を移す企業が目立っています。未だ先行き不透明の情勢の中、企業は新たな収益のために新規事業への参入、転業と市場縮小に向けての準備を加速させなくてはなりません。必要な資金、新事業のノウハウは政府支援も整いつつあります。「もう少し早く動いていたら」とならないよう、転業・新規事業で新しい収益確保準備を急がなくてはなりません。ぼやぼやしていられませんよ。今は具体的に動く時です。
[2010.12.15]
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