通貨デリバティブ商品に潜む巨大損失、リスク回避か甘い罠か倒産増加!
為替利益、実態が明るみに
金融庁は12月4日、メガバンクなどを対象に通貨デリバティブ商品の販売方法や損失状況などについて実態調査に乗り出すと発表しました。急速な円高で為替デリバティブ商品を購入した中小企業が経営難に陥っている事例が相次いでいるため、調査結果を分析し金融機関などに適切な販売を促すと報道がありました。
帝国データバンクによると為替デリバティブ商品が原因で倒産した企業は平成20年は3社でしたが、今年は16社に上り、国会でも問題視する意見が出されています。金融庁では、金融機関などが取引先企業に無理な販売をしていなかったか。損失のリスクを事前に企業に説明していたのかなどの点を調べて行くようです。メガバンクが売り込んだ通貨デリバティブ商品が中小企業を窮地に追い込み、倒産の危機に瀕している実態が明るみになりそうです。
為替利益、ハイリスク金融商品
商品や資材を輸入し販売する事業では円安になれば輸入価格が高くなり、販売価格にも上乗せされ商品価格は高くなります。一方で円高となれば安く仕入れることができ、同価格で販売すれば利益率を上げることが可能になります。この不安定なリスクを避けるために通貨オプションという金融商品を金融機関などが扱い、購入した中小企業が今、倒産の危機となっているのです。
通貨オプションとは為替デリバティブ商品の一種であらかじめ決めた価格で外貨を売買する権利のことで、変動リスクを回避できる金融商品です。契約時の手数料はほぼ無料で、為替によっては利益の出る商品として金融商品に詳しくない経営者であれば金融機関の話に乗ってしまうでしょう。輸入販売企業が1ドル100円のときに「5年間、1ドル90円で毎月10万ドルを購入する権利」を取得すれば実際には1,000万円必要ですが900万円ですむという契約で、毎月100万円の利益が出るのです。一方で1ドル80円と円高になれば100万円の損失が出るハイリスクな金融商品です。
融資を円滑にしたい背景が、無理なデリバティブ契約へ
通貨オプションの契約は5~10年で、途中解約の場合は違約金もかかり、為替レートにもよりますが数千万から数億円の損失になってしまいます。通貨オプションは平成20年リーマンショックで販売件数は減ったものの、5~10年と未だ契約中の中小企業が円高で窮地に追い込まれているのが現実です。
国会で問題となったのは、理解していない経営者に通貨オプションを販売したり、融資と抱き合わせで契約させたりと、企業へしっかり説明できていない点なのでしょう。中小企業経営者は、取引のある金融機関との関係を円滑に保つために、勧められるまま契約してしまったというケースを多く聞きます。帝国データバンクでは為替デリバティブによる倒産が今年、既に16件あり「潜在的に数百社が危機的な状況ではないか」とみているようです。
巨額損失で株主から損害賠償
ヤクルトの元副社長がデリバティブ取引の巨額損失をめぐり株主に損害賠償を求められ、最高裁は67億円の支払いを命じたと12月6日、報道がありました。ヤクルトは有価証券の含み損の埋め合わせ目的で、投機性の高いデリバティブ取引で失敗。損失は平成10年3月期には1,000億円を超えたといいます。
通貨オプションはプロでも予測不可能
数年先の為替レートの変動はプロでも予測がつかないものです。ましてや中小企業経営者が3年、5年先のレートなどを的確に読み取れるものではありません。うまい話には裏があると思わなければいけません。為替デリバティブでの取引きにはリスクが大きいのです。
通貨オプション契約は、契約を勧める金融機関も、契約する企業も十分な知識を持って契約をする必要があります。金融庁の早期の調査、実態を把握し、デリバティブで窮地に追い込まれた企業への対策が急がれます。為替デリバティブ契約で資金枯渇している企業は地元の名士なのです。安定した企業であるケースが多く、その地域の雇用の要なのです。
参考記事:週刊ダイヤモンド「中小企業の破綻増加は必至!銀行がはめた為替デリバティブの罠」
●参考記事:金融庁「デリバティブ取引に対する不招請勧誘規制等のあり方について」
●関連記事:オフィシャルサイト「デリバティブ取引とは」
[2010.12.8]
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