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中国、リン鉱石を輸出制限!レア・アース二の舞か/政府推進、第6次産業が危機!

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突然の輸出関税110%に引き上げ
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12月2日、中国は農産物の肥料や酪農飼料の原料となるリン鉱石の輸出を制限したと報道がありました。リン鉱石は鉱物資源のため、採掘できる国に偏りがあり、中国、米国、モロッコと産出量上位3位で65.8%を占めています。1位の中国では31.5%で、90%以上のシェアを誇ったレア・アース同様のことが起きようとしているのです。資源のない日本の肥料はその原料を輸入品に頼っており、今後も同様なケースが起こらないよう検証が必要でしょう。
肥料の需要は、世界の人口増や中国を始めとするアジア新興国などの経済成長によって国際的な紛争戦が行われており、供給側では希少資源として占有、価格決定に力を持っています。
中国は12月1日、リン酸アンモニウムなどの化学肥料の輸出関税を31日まで110%に引き上げると発表しました。リン鉱石を原料とするリン産アンモニウムは、直近の税率では数%で、肥料業界では輸出規制の強化に身構えていたと報じています。

高くても言い値で買うしかない
農産物などの肥料や酪農の飼料に必要な成分は、窒素、リン酸、カリウムが三大要素と言われ、作物が生育するには欠かせないといいます。リン酸の元となるリン鉱石の価格は、すでに平成18年1月に1トン当たり13,000円と、前年同月の9,000円から44.4%増となっており、平成18年の2倍という高値圏を推移しています。
日本は元々リン鉱石を米国から輸入していましたが、鉱脈の枯渇で中国やモロッコへ輸入先を変えました。

体力のある肥料メーカーの育成が不可欠
中国国内の経済の急成長で自国の肥料需要に資源の確保に出たのでしょう。平成20年肥料の暴騰以降、農林水産省では神経を尖らせていたようですが、あまりの突然な対応に唖然でしょう。輸入する国内の肥料メーカーは約30社あるとされますが、統廃合が進まず、国際競争力のあるメーカーが育っていないようで、このままでは中国の言い値で買うことになってしまうのです。外圧に強いとされた農林水産省の市場分析、メーカーの体力強化などに思わぬ問題が浮き彫りになりました。

早期対応で代替国から調達:三井物産他商社
三井物産は、高値圏にあるリン鉱石の獲得にすでに対応。今年4月には南米ペルーのリン鉱山の権益を、ブラジルの資源大手バーレから取得と発表しました。日本企業初の肥料資源の権益確保に乗り出しで、三井物産肥料資源事業室の小島室長は「原料で寡占が進めば、値上げを突きつけられた時にのまざるをえない。と危機感をあらわしました。
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日本向けに安定確保するためにも、新興国に供給して事業をするためにも、権益を確保した」とコメントがありました。また、ある商社関係者は「原料を買う力が落ちれば、日本はいずれ、高いものしか買えなくなる。農業経営が難しくなってくる」と危機感を報じました。
他の大手商社でも、構造改革が遅れ、非効率が温存された肥料メーカー業界を横目に、カリウムなどの権益確保を探っているようです。カリウムも同様に産出量上位3位のカナダ、ロシア、ベラルーシで63.4%で占めており、国別の輸入量によっては調達分散などのリスクヘッジも必要でしょう。

新たな技術か、汚泥からリンを抽出「都市鉱山」
リン鉱石を年間80万トン前後、主に中国から輸入する日本。日本はレア・アースのように独自の技術を駆使して、同様の肥料が開発する研究は、既にされているでしょう。国内で1年間に出る下水からの汚泥は約220万トンあり、国土交通省の試算によると約100万キロリットルの原油同様のエネルギーを生み出せると言います。下水処理場が様々な資源の集まる「都市鉱山」と報道がありました。下水処理場の汚泥には15%分のリンが含まれてるといいます。岐阜市では今年4月から同市で出る汚泥からリンを回収する事業を始め、年間約3万トンの汚泥からリンを約60トン含む肥料を作るようです。

農産物が戦略輸出品目になる日
農産物の生産に不可欠な肥料は、政府の掲げる第6次産業育成や農産物の海外輸出など、今や戦略物資となっています。一国に頼らない調達先、日本独自の技術でレア・アース同様乗り切り、その代替技術をフルに生かして海外へ農産物生産品目を輸出、外貨獲得、国内経済発展に向かっていきたいものです。

[2010.12.4]

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八木宏之プロフィール
セントラル総研・八木宏之
株式会社セントラル総合研究所 代表取締役社長。連帯保証人制度見直し協議会発起人。NPO法人自殺対策支援センターLIFE LINK賛同者。
昭和34年、東京都生まれ。大学卒業後、銀行系リース会社で全国屈指の債権回収担当者として活躍。平成8年、経営者への財務アドバイスなどの経験を活かし、事業再生専門コンサルティング会社、株式会社セントラル総合研究所を設立。以来14年間、中小企業の「事業再生と敗者復活」を掲げ、9000件近い相談に応えてきた。
事業再生に関わる著書も多く出版。平成22年5月新刊『たかが赤字でくよくよするな!』(大和書房)をはじめ、『7000社を救ったプロの事業再生術』(日本実業出版)、『債務者が主導権を握る事業再生 経営者なら諦めるな』(かんき出版)、平成14年、『借りたカネは返すな!』(アスコム)はシリーズ55万部を記録。その他実用書など数冊を出版している。
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