医療機器:40兆円産業、先進医療を成長産業へ!「医療観光」増加期待
独自技術を生かして電子部品から医療機器へ
長引く不況、急激な円高から生産の拠点を中国など新興国へシフトする企業が増える中、成長産業へ事業を転換する企業もあります。長野県諏訪市の電子部品製造の株式会社ミスズ・サンメディカルHD(SMHD:長野県諏訪市諏訪1-3-11代表取締役社長 山崎俊一)では、数年前から受注量が減少することを見越し、医療機器のような高付加価値品を製造するしか生き残れないと補助人口心臓器を製造、年内発売までこぎつけました。SMHDはこれまでの技術を生かし、弱った心臓のポンプ機能を補い体内に血液を送り出す補助人口心臓器を製造し、機器は米国へ輸出されるとの報道がありました。
国内の空洞化が進むなか、長野県内の製造業では精密加工技術を生かして、信州大学医学部部と連携して医療機器の需要をつかみ、成長分野である医療機器分野へ進出、生き残りをかけるようです。
医療機器:10年後には40兆円産業
世界の医療機器の市場は、平成21年で20兆円、平成32年には新興国などの需要を含め40兆円産業と言われています。政府の掲げる「21世紀の日本の復活に向けた21の国家戦略プロジェクト」でも、増加する高齢化社会や外国人の受け入れなど医療・介護産業は、需要のある成長産業としています。未承認薬や医療機器の迅速な提供が今後望まれ、実施のための経済・金融支援や優遇措置、規制緩和、研究機関や大学医学部などの連携促進策なども行われていくことでしょう。
地元の研究機関、医学部と連携!
当然のように大企業もこの成長分野への進出を狙っており、企業規模が劣る中小製造業は、医師や看護婦が求める機器の需要をつかむため、いかに研究機関、大学医学部と連携をとるかが重要になりそうです。
5人に1人が高齢者、医療費52兆円に
総務省の「平成22年版高齢社会白書」によると平成21年10月1日現在、65歳以上の高齢者人口は2,901万人(前年2,822万人)と総人口に占める割合は22.7%となっています。5人に1人が高齢者という社会、同省では平成52年をピークに毎年増加と推定しています。高齢者の医療費を見ると、厚生労働省の平成19年度「医療保険に関する基礎資料」では「老人医療の受給対象者」は「受給対象以外者」に比べ、1人あたりの治療費が4.8倍、うち入院は7.4倍と、少子高齢化から医療・介護産業の需要は今後も増加すると予測できます。同省の国民医療費の推計によると、平成22年度の37兆5,000億円が平成25年度には1.4倍の52兆3,000億円に達すると試算しています。
国交省観光庁「人間ドックツアー」世界で発売
国交省観光庁では平成22年7月に日本で医療を受けるため来日する外国人の「医療観光」増加促進のため、国内の医療機関や開業医を対象に支援を強化すると発表しています。同庁では「(医療と観光を掛け合わせた)医療観光はアジアでは大きな市場になっている。成長分野である医療と観光が連携をとってマーケットを拡大していくことは、まさに成長戦略の重要な柱だ」と溝畑長官はコメントしています。
「医療観光」のニーズに対して通訳者・翻訳者養成学校が「医療通訳コース」を始めたり、旅行業界ではPET(ペット:陽電子放射断層撮影検診)ツアーも企画されています。
羽田周辺、24時間営業の医療機関も?
羽田空港の国際化、24時間稼働にすると、金曜日に仕事を終了してから日本に来て土・日で検診・診療して、月曜の仕事に間に合うように帰国するうような「カミカゼ検診」ツアーも出てくることでしょう。
韓国の仁川空港と比べて都心に近く、羽田空港の国際空港化で医療関連産業が空港周辺に集まる計画です。もしかしたらサイレンを鳴らしながら赤色灯を回した飛行機が、他の飛行機を退けて着陸する日も近いのかもしれません。
[2010.11.9]
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