TPP加盟:農業・漁業、生産加工販売一体の第6次産業とは?
TPP加盟は「日本が変わる」インパクト
玄葉国家戦略大臣は11月2日、TPP(Trans-Pacific Partnership:環太平洋戦略的経済連携協定)を含む貿易自由化の基本方針を9日に決定すると発表しました。TPP加盟は「日本が変わる」ほど影響のある協定です。太平洋地域の日本、中国、東南アジア諸国、オセアニア諸国、アメリカが自由貿易圏を作ろうという構想で、関税なしで自由に貿易ができるというものです。自動車や電気など輸出産業にとって相手国で関税がかからない分、現地での販売にとても有利です。逆に加盟国からの輸入で影響を受ける農業や漁業については、個別所得保証や輸出産業化を推進して保護する事も盛り込まれています。
農水省:GDP1.6%減、雇用を340万人減と試算
農林水産省はTPPへの参加で関税撤廃された場合、農産物生産が大幅に減少すると試算し、豚肉や鶏肉など14品目で4兆5、600億円生産が減少すると公表しました。コメなど主要農産物全19品目の関税を完全撤廃し、生産者支援をしなければ食料自給率が40%から14%に低下、関連産業を含めGDP(実質国内総生産)を1.6%(7兆9,000億円)、雇用を340万人減少させると試算しています。
この試算をめぐっては政府内では、いつも通り統一性が無く、農林水産省が大幅な減少を公表すれば、内閣府はプラス効果を。そして経済産業省では比較にならないデータを公表するなどTPP参加、不参加の論議を混迷させているようです。
内閣府:GDP0.48~0.65%押し上げると試算
内閣府のTPP参加に伴う試算は、貿易拡大によってGDPが0.48~0.65%(2兆4,000億~3兆2,000億円)押し上げられるとみています。経済産業省ではTPPへ参加しなかった場合、主要国との自由貿易交渉で韓国に先攻を許した場合、自動車など各産業でシェアが奪われ、平成32年にはGDPが1.53%(10兆5,000億円)、雇用が81万2,000人押し下げられるとしています。やはり内閣府、経済産業省はTPP参加推奨のようです。
経済3団体:TPP参加要請緊急集会
TPP参加推奨は経済界も同様で、日本経団連、日本商工会議所、経済同友会の経済3団体は11月1日、TPPへの参加を要請するため「緊急集会」を開きました。決議には「この機会を逃せば、わが国は国際的な事業環境の整備において諸外国から大きく後れをとり、ひいては世界の成長と繁栄から取り残されることになりかねない」と将来を危惧する記述を加えました。
農業、漁業が生き残る輸出、第6次産業?
農林水産省では、TPP参加となれば大幅な生産減少が確実な農漁業への対策として、農水産物の生産に「2次産業の生産」、「3次産業の小売り」を融合させた6次産業化を推進しています。育てた生産物を農協などに卸すだけでなく、加工をして消費者への小売りまでおこなうものです。
九条ねぎを扱う京都の農業生産法人では、手作業で泥を落とし、刻んで袋詰め、業務用にラーメン店など飲食店に販売、年400万円の売上げが平成21年には2億7,000万円に成長。スーパーなどへ販路を広げるようで、12月から新工場を稼働させるようです。ブランドねぎを単に卸すだけではここまで伸びなかったでしょう。
ハイテク農産物:工場で生産か
日本の食の安全基準は最高のレベルで、中国でも国内野菜の10倍する安全な日本産野菜はとても売れており、世界中から信頼されています。今後、輸出はもちろん、同業の生産者を集め株式会社化した第6次産業は、生産地に近い産業として広がりそうです。
製造業空洞化で使わなくなった自動車など精密機械工場にはハイテク技術を駆使したネギやレタスの生産に使われる日が来そうです。ハイテク野菜を買いに秋葉原に買い物に行く主婦が登場するかもしれません。
▼関連記事:オフィシャルサイト「社内勉強会:TPPで日本の農漁業が変わる第6次産業」[2010.11.6]
[2010.11.4]
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