トヨタ自動車:「日本のモノづくり」にこだわれるか?円高で雇用環境悪化
補助金終了、円高、それでもモノづくりにこだわりたい
「日本のモノづくりにこだわりたい」10月18日、トヨタの豊田社長は取材の席で述べました。「理屈から言えば今の円高推移ではアジアなど新興国とは勝負にならない」と指摘した上で「トヨタは日本で生まれたグローバル企業、そう簡単に海外に(生産拠点を)もっていくようなことはしない」と語りました。
エコカー補助金終了、急激な円高など、厳しい環境でも国内の雇用維持に全力を挙げる考えを示しました。その上で「国内生産縮小をトヨタがやったらこの国はどうなってしまうのか」と国内の空洞化に危機感を強調していました。
トヨタでは、グループ主要企業社長会で「仮に100万台、生産が減少すると約12万人の雇用が失われている」と試算、平成22年度はグループ会社を含め、国内17拠点で320万台の生産を計画しているとの事です。
ゴーン社長:日本はモノづくりを革新する場
10月18日、外国為替市場は円相場が15年ぶりの円高を記録、トヨタをはじめとする輸出産業に大打撃を与えました。トヨタは取材に対し「自動車業界を成長戦略の軸に持ってきて欲しい」とのコメントを示し、日産のカルロス・ゴーン社長は「米国など海外の中央銀行は積極的な対策に乗り出し、成果も出ている。日本が何もできないということはない」とコメントし、さらなる金融緩和、経済政策を求めました。日産でも「日本はモノづくりを革新する場として重要。日本の拠点を守るために戦う」と宣言しています。
日産マーチ、トヨタカローラが外車に?
日産の小型車「マーチ」は生産コストの安いタイで完全生産され、輸入車となって国内に低価格で販売されています。トヨタも円高が続けば数年後「カローラ」の輸出分の生産をすべて海外に移管する検討を始めると報道されました。これ以上の生産拠点海外流出防止に一層の金融緩和、円安への対応が必要です。
1円上がれば数百億円の損失
輸出が伸びる韓国の自動車産業では、政府のバックアップを受け自動車メーカーを伸ばし、官民一体となった政策を打ち出しています。トヨタ、日産とも円が1円上がると数億、数十億、数百億の損失が出るのでしょう。この両社の危機感は下請けとなる自動車部品産業の中小企業にも危機感なのです。政府には、大企業と違い中小企業は大胆なコスト削減やリストラ、海外移転などは簡単にできないことを知って欲しいものです。
国内工場生産で雇用創出1万人
トヨタの完成車製造子会社のセントラル自動車(神奈川県相模原市緑区大山町4-12取締役社長 葛原徹)は、相模原市から本社、工場を宮城県大衡村へ移転、平成23年1月に稼動予定となります。セントラル自動車はじめ宮城県へは、すでに進出を決めた企業19社(うち自動車関連10社)があり、雇用規模は少なくとも計5、400人に上ることが宮城県議会の定例会で明らかになりました。
新生産拠点は地域行政の協力
また宮城、岩手両県内の一部の地域を港までの運搬効率アップのため国の許可限度より長い自動車運搬用トレーラーが走れる「自動車輸送特区」を内閣府に申請、年内に認定される見通しです。大衡村でもセントラル自動車従業員向けに宿舎を用意するなど歓迎ムードいっぱいです。村井宮城県知事は、新しい企業の参入で運輸、サービス産業などにも波及効果があり、雇用創出は1万人規模になる見込みで「一層の雇用創出が期待できる」と強い手応えを感じているようです。
具体的な対策が必要:今のままでは先がない
トヨタ自動車の12万人、宮城県の1万人雇用創出と具体的な計画です。菅政権は雇用維持は産業界任せに感じます。雇用確保を連呼しているのだから具体的計画、目標を設定し、将来に希望のある経済政策を実践していただきたいものです。
[2010.10.21]
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