中国:レア・アース市場独占か?、日本はお家芸!新技術で解決
液晶向け研磨剤の価格が4倍
8月28日、日中両政府の経済閣僚は「日中ハイレベル経済対話」を北京で開き、レア・アース(希土類)の輸出枠を中国が大幅に削減したため、日本は「世界全体に大きな影響がある」として削減の再考を求めました。中国は採掘に伴う環境問題などを理由に再考には応じず、問題解決には至りません。
直嶋経済産業相も「下半期だけでみれば輸出枠は7割減。これはやりすぎだ」と食い下がったようですが中国側は大幅削減を譲る気配は全くなかったようです。
9月13日の報道によると、レア・アースのセリウム取扱い国内最大手の昭和電工は、ガラス基板の製造に使うセリウム研磨剤を11月出荷分から4倍に値上げすると発表しました。「日中ハイレベル経済対話」で解決されなかった問題が今、実態経済の価格に反映されようとしているのです。
省エネ・地球環境に貢献するレア・アース
レア・アースは(希土類)元素とも呼ばれ、元素番号57のランタン(La)から71のルテチウム(Lu)までのランタノイドにスカンジウム(Sc)とイットリウム(Y)を含めた17元素の総称です。レア・アースは、ほんのわずか添加するだけで材料の特性を変えることができる、まさに先端材料の栄養剤ともいえるでしょう。
レア・アースは、昭和30年代に「カラーTVのブラウン管の蛍光体」や「カメラの屈折レンズ」に利用され、「高性能永久磁石」「充電式電池」ではオーディオ・パソコン・デジタルカメラなど小型軽量化に大いに役立ってきました。
近年、レア・アースは「省エネ・地球環境に貢献する資源」である事は、ハイブリットカーの「高効率な永久磁石モーター」、「安全クリーンなニッケル水素電池」を生み出した資源です。世の中のエネルギーを効率良く活用し、安全でリサイクル可能な携帯電話、パソコン、その他端末などのデバイスを開発する上で、今後も多くの需要を見込める資源とされています。
レア・アースに頼らない日本独自の技術
今や最先端の製品にはなくてはならない存在になったレア・アースの産地は、中国が世界の産出量の9割を占めており、ほかにインド・オーストラリア・ブラジルなどに偏在しています。 輸出枠を中国が大幅に削減すれ ば、省エネ、地球環境に貢献する製品がすべて値上がりする懸念も残ります。
なんのなんの日本のお家芸で解決
国内の家電・素材メーカーでは中国の強硬な姿勢に、主力資源であるレア・アースを使わずに電気自動車や家電品に不可欠なモーターを作る技術を相次いで開発しています。日立製作所では中国からの安定調達に懸念があるとして、酸化鉄で実用的なモーターを試作し、2年後の製品化を目指しています。また帝人と東北大学では鉄と窒素を使って新素材を開発、高性能モーターに応用できるとしています。レア・アースが入手困難になったときこそ技術で解決する姿勢はまさしく日本のお家芸です。
日中共同ブランドで世界へ
すでに日本では中国からの安定調達が懸念されることを想定し、代替策が民間企業や大学で行われていたとは、さすがに技術立国の日本だと感じます。今後の需要を考えればレア・アースの研究開発はさらに拡大を見せ、中国に頼らない日本独自の技術でエコロジー、世界環境を考慮した資源の開発、製品化を目指していくでしょう。
反面、中国側は輸出規制でレア・アースの値上げを継続するのか今後の動向が気になります。日中両政府レベルの対話で解決できなければ、民間企業レベルで製造合弁会社設立や鉱山開発の合弁会社設立等の交渉も模索すべきでしょう。中国にとってレア・アースは原油のようなものです。
日中発世界標準エコ
世界のエコロジー、環境を考えて日本・中国独自ブランド作り上げ、日本・中国から世界の産業にエコ商品供給が出来るような、技術・ブランド・イメージを広げてもらいたいものです。壊れてからでは取り返しがつかない地球のために!
[2010.9.14]
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