続々参入する格安航空会社(LCC)、法人税格差が国内航空会社を苦境に
ANAブランドではできない格安運行
9月9日、全日空は香港の投資グループと共同で格安航空会社(LCC=Life Cycle Cost)を設立、平成23年度下半期より運行を始めると正式発表しました。関西空港を拠点に国内外路線を「ANA」ブランドとは別に航空便を運行させるとの事です。
国内では九州新幹線など鉄道の整備拡大、高速道路の一律料金など移動競争への対応、海外では海外LCCの国内参入による競争激化による危機感からの設立なのでしょう。全日空では徹底的なコスト削減を実現し、アジア需要を中心に顧客基盤の拡大に自信を見せているようです。コスト削減のためにはキャビンアテンダントも掃除をする時代なのです。
LCCは、アジア太平洋地域で平成13年のシェア1.1%から平成21年では15.5%と急拡大させ、ビザ緩和による中国からの観光客の急増でさらに需要は伸びていくでしょう。平成19年以降は、豪ジェットスター航空など6社が進出、アジア最大LCC「エア・アジア(マレーシア)」も年内開設を検討中のようです。サービス・価格競争はさらに激化しそうです。
生産拠点、本社までもが海外へ
同日、菅首相は新成長戦略実現会議の初会合で「競争力の強化」「新産業創出での雇用」を軸とした法人税の引下げについて検討を強調しました。国際的にも高い日本の法人税(約40%)は、平成23年度から主要国並みに引下げの方向で検討されるようですが、税収不足にさらに引下げと今後、財務省との調整が焦点になりそうです。
円高による企業の収益圧迫から企業は、新興国などへ生産拠点をシフトし、国内は空洞化が加速、さらに法人税が高ければ本社までが海外へ移転しかねません。アジアの法人税では韓国が27.5%、中国25%、シンガポールでは17%なのです。シンガポールに本社をおき、中国など製造コストの安い国で生産した商品を海外で販売する、経営者なら誰もが思うことでしょう。
世界が競争相手に
帝国データバンクの法人税調査によると11,446社中71.4%の8,171社が「引き下げるべき」と答え、規模別に見ると大企業が67.1%、中小企業が72.7%でした。また法人税が引き下げられた場合、何を期待するかの問いに「企業利益の押し上げ」が64.6%、「企業の国際競争力の向上」が43.9%でした。すでに11,446社中43.9%の5,021社が海外企業との競争を認識しているのです。
今後、国内企業が海外へシフト化する中、海外企業は日本国内へ市場を求め、企業競争は、国内のみならずグローバル化されてきます。世界が競争相手になっているのです。
乏しいマーケットに新たなライバル
海外企業は日本に市場を求め企業が参入してきます。すでに医薬品や音楽端末販売、電子書籍販売、今後もその数は増えていくでしょう。日本が海外へ市場を求め、海外企業は日本の市場を求めて参入してくるのです。産業の空洞化で国内の中小企業が伸び悩む中、さらなるライバルが海外から出現するのです。3~5%程度の法人税引下げ経済的効果が見込めないと考えるのなら、半分にするなど思い切った引下げで多大なる効果を期待したいものです。
[2010.9.10]
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