続くバター不足。それでも輸入拡大はNGで、消費者へのしわ寄せも続いている。そのからくりとは?
私たちの買っているバターは国際相場よりも3.5倍も高い! なぜ?
バターの品不足が続き、国内価格が29年ぶりの高値を付けました。政府は年内には、バター1万トンを追加輸入する方針ですが、消費者にすれば、なんとも動きが鈍い。安価な外国産をなかなか輸入できない背景には、競争力の低い国内酪農家の保護や、7月末の環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の影響など、複雑な要因があります。簡単に整理してみましょう。
国内のバターの販売価格(大口需要者向け)は6月、1キロ当たり1374円まで高騰しました。一方、国際価格は、3.125ドル(約387円)。中国など新興国で需要が鈍化し、乳製品の国際相場は13年ぶりの安値というのに、国内消費者は、3.5倍も高いバターを購入しています。スーパーでは「お一人様1点限り」の購入制限も見られ、価格は依然、上昇中です。
生乳の需給バランスの調整弁を果たすバター
日本の食料自給率がわずか39%で、世界の主要先進国の中でワースト1位であることは、ご存じの通りです。酪農業も、担い手、乳牛が出す生乳の総量ともに減少が続き、政府は、輸入量を厳しく管理することで、業者を保護しています。国内で流通する乳製品のうち、牛乳はほぼ100%が国産ですが、バターの材料すべてまでは賄えません。そこで、政府機関が必要量を輸入し、状況に応じて輸入を追加するのですが、その際、35%という高い関税率をかけ、国内外の価格差をなくしています。民間業者が独自に輸入するバターには、価格に対し29.8%、1キロ当たり985円の関税をかけています。
乳牛が出す生乳は、牛の体力が弱る夏に減少し、冬に増加します。一方、需要は夏に増え、冬に減ります。この不安定な需給バランスの「調整弁」を、バターが果たしてきました。ところが、先のTPP交渉で、ニュージーランドから、生乳換算で年103万トンの輸入量を大幅に増やすよう、強く求められました。政治的駆け引きと、国内酪農家保護との板挟み。「どんどん輸入して値下げしましょう」とは言えない状況なのです。
●関連記事:「クリスマス商戦に打撃?!恐怖の「バター不足」再来/その場しのぎの緊急輸入では「慢性化」は不可避」[2014.11.21配信]
[2015.9.9]
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