日銀短観、景況感が7四半期ぶりに悪化!重くのしかかる資源高と円安
大企業の業況判断指数(DI)が7四半期ぶりに悪化
4月1日、日銀は3月の短観を発表しました。大企業製造業の景気判断を示す業況判断指数(DI)が7四半期ぶりに悪化しました。
大企業製造業の「業況判断DI」は前回(2021年12月)の調査から3ポイント悪化してプラス14ポイント、大企業の非製造業でも前回から1ポイント悪化してプラス9ポイントとなりました。業況判断DIは、企業の経営者が景気の現状や先行きをどのように見ているのかを示す指標で、景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」の割合を引いて算出します。
2020年4月から5月にかけて、新型コロナウイルスの感染拡大で1回目の緊急事態宣言が出ました。そのあと6月の調査で大幅に落ち込んだ業況判断DIは徐々に回復していましたが、今回の調査で初めてマイナスとなりました。
コロナ禍とウクライナ紛争で見通し立たず
業種別では、原材料高で営業利益が押し下げられた紙・パルプ、窯業・土石製品、食料品で景況感が大きく悪化しました。半導体不足や国外の供給網の滞留などへの対応に苦慮する自動車や電気機械も悪化しています。
産業ごとの明暗も目立ってきました。製造業では、原材料高などによる仕入れ価格の上昇を販売価格にある程度転嫁できており、設備投資も過去平均を上回る計画を立てています。一方、非製造業では製造業ほど価格転嫁が進んでいません。オミクロン株の感染拡大で人々の行動が再び制限されたため、宿泊・飲食サービスの景況感が悪化しました。
3ヶ月後の見通しを示す「先行き判断DI」も、大企業製造業が5ポイント悪化、非製造業が2ポイント悪化を見込んでいます。紙・パルプや食料品、宿泊・飲食サービスといった内需型産業の業況判断DIが悪化しているのも、国内の市場規模の回復を期待しづらい現状を表しているといえるでしょう。
「日銀短観」から見えてくる日本経済の足取りと現状
日銀短観(全国企業短期経済観測調査)は、統計法に基づいて日本銀行が行なう統計調査です。年4回(3、6、9、12月)、企業に直接アンケート調査をし、その集計結果や分析結果をもとに日本の経済を観測します。全国の大手企業と中小企業、製造業と非製造業などで分けて、約1万社の企業を対象に、業績や状況、設備投資の状況、雇用などについて実績と今後の見通しを聞きます。
さまざまな組織・団体が企業にアンケート調査を実施しているなかで、日銀短観の特徴は回答の回収率が高いことと、調査の翌月には公表されることです。調査結果には経営者の「今」の時点の考え方が集約されているため、景気動向を占ううえで重要な経済指標となっています。
ちょうど1年前、「日銀短観、大手製造業が1年半ぶりにプラス!逆に飲食・宿泊業は逼迫の格差(2021.4.6)」の記事では、大企業製造業の業況判断DIがプラスに転じたことをお伝えしました。今回の業況判断DIの悪化には、コロナ禍からの経済回復の流れがひと息ついたところに、資源高や円安などの不安要素が影を落とし、企業が慎重な姿勢を強めていることが伺えます。
日本経済は、かねてより物価高と欧米の金融引き締めの動きによってなかなか浮上できずにいました。そこへコロナ禍の長期化、さらにロシアのウクライナ侵攻とそれに伴う原材料価格の高騰が加わったことで、先行きの見通しが立たない企業の懸念は増しています。
3月29日、岸田首相は閣僚懇親会で緊急経済対策を4月末までに取りまとめるよう指示しました。ウクライナ侵攻による原油高・物価高に対応するための総合的な対策となっていますが、日銀短観だけ見てもわかるように企業規模や業界によって深刻さに濃淡があります。政府にはぜひ焦点を絞って効果的な対策を実施してほしいと思います。
[2022.4.5]
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