為替デリバティブ!メガBank・過去の遺産:金融ADR申立て企業の、Bank負担和解45%は多い?少ない?
デリバティブ損失倒産、前年から2割増
欧州の財政不安や米景気の減速によって、歴史的円高は不気味に進行を続けています。9月に入ってからも76~77円台を推移。輸出産業では収益を圧迫され大企業を中心に海外移転や不部品など現地調達する動きが加速し、空洞化が現実のものとなっています。大企業の川下に位置する中、小規模、零細企業は、受注減少や値下げ要求交渉と悪条件が重なります。日本経済を支えるピラミッドの土台が揺るぎ始めています。
帝国データバンクによると8月の円高関連倒産は、8件と単月では今年最多。1月~8月の累計は32件となり前年同期の28件か21.4%増となり、リーマン・ショックの平成20年を上回るペースで推移しています。倒産原因別では、「為替デリバティブ」の損失が8件中4件と半数を占め「受注減少」が3件、「輸出不振」が1件と続きます。
3年で30円以上も円高で為替損、解約にも数億円?
通貨オプションなどの為替デリバティブは、輸入業者など円高になれば得をするはずが、数年前に契約をしたデリバティブで為替が設定。数年に渡る契約期間内は、設定された為替で取引しなければなりません。ここ数年の為替相場は、平成20年8月に1ドル108.75円、21年8月は93.01円、20年は84.16円と3年で30円以上も円高となりました。デリバティブ損失は、業績は維持し数年で得た利益を原材料などの調達で一瞬に赤字となってしまいます。中小企業経営者としては、諦めるに諦められないでしょう。
さらに、途中で解約すれば、違約金を金融機関に支払わなければならず、その額も数千万円から数十億にのぼります。金融庁では、企業と金融機関の問題解消に金融ADR(金融分野の裁判外紛争解決)による解決を示しており、中小企業などは為替デリバティブで生じた損失賠償を全国銀行協会の金融ADR機関に申し出る件数が急増してきました。
金融機関負担:違約金全額+為替損失5割以上が大半
全国銀国協会の金融ADR機関へ、企業が為替損害の賠償や違約金免除を申し立てる件数は、平成21年度36件でしたが22年度には約5倍の172件に急増。今年度も第1四半期(4月~6月)の3ケ月だけですでに110件と急増しています。このうち金融ADRによって和解に至ったケースは半分以下の50件にすぎません。
金融ADRには、裁判のように公開の義務はなく、実態把握が難しいのが実情です。報道などでは、和解で生じる金融機関の負担は1件当たり1~2億円程度で違約金の全額と為替損失の半額以上を金融機関が負担するのが大半と、メガバンク関係者の声があります。金融庁の調査では、為替デリバティブを保有する中小企業は約19,000社、契約数では40,000件にも及び、金融機関の潜在的な負担額は2兆円をも超える試算がされています。
全銀協会長「含み損が増えている状況では丁寧にやっていかなければならない」
全国銀行協会の永易会長は、9月15日の会見で、急激な円高で為替デリバティブを契約した中小企業が多額の損失を抱えていることに関して「契約するときに顧客適合性など説明責任で問題があったと思わないが、含み損が増えている状況では丁寧にやっていかなければならない」と述べています。また、「ADRに行く方や銀行は当面増えることになる」と、急増している認識も示しています。
中小企業経営者にとって、金融機関や金融ADR機関などビジネスパートナーというよりは一段上がった存在にも見えるのではないでしょうか。円高や電力不足など中小企業は何重もの要因に窮地に追い詰められています。事業の継続や従業員の維持、生産品、技術の承継のためにも金融庁公認の金融ADRで交渉、解決に向け、ともに課題に取組み、危機的状況から切り抜けましょう。為替デリバティブ損失のご相談はお気軽に。
[2011.9.20]
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