38年ぶりに医学部新設が決定、2017年度の開学を目指す。成長戦略の一環というだけでなく、「国民のための医学部」になっていけるか。
超高齢社会に合う新しい医療の礎になれるか
政府は、千葉県成田市に大学医学部の新設を認める方針を決めました。医学部の新設を禁じた文部科学省令を今秋にも改正し、2017年度の開学を目指します。山王病院(東京都港区)や三田病院(同)などを運営する国際医療福祉大(栃木県大田原市)が、乗りをあげています。医師不足は日本の重要テーマですが、将来の人口減少を踏まえると、単に数を増やせばよいとも言えません。新設の医学部は、超高齢社会に合う新しい医療の礎になってほしいものです。
新設医学部は、①海外の経験豊富な教員を確保②授業の多くを英語で行う③公衆衛生に関する大学院を設置――などを特徴とします。成田空港に近いという立地を生かし、日本の高度医療を求める患者を海外から呼び入れ、専門検診や治療を行う「医療ツーリズム」にも積極的です。それはそれでよいのですが、国内の医師不足という現状、しかも、超高齢社会に必要な、患者の体全体、生活を含めた人間全体を診られる医者の育成に、政府の目は向いているのでしょうか。
医療は国民のための「公共財」である
医師不足(正確に言うなら病院の勤務医不足)は10年以上前からの課題で、政府は、08年度から19年度までの時限措置として、医学部の定員増を決めました。その効果や人口減少の影響もあって、人口10万人当たりの医師数は、12年の227人が、20年には264人、25年には292人と増え、先進国が主に加盟する経済協力開発機構(OECD)の平均を上回ると推計されます。そうなると、問われるのは医師の質であり、地域における他職種連携のシステムです。
アベノミクスは、成長戦略の柱の1つに「医療」を掲げ、医療ツーリズムをその例にあげています。しかし、医療はまずもって、国民1人1人の暮らしを支えるための「公共財」であり、利益の追求が第一義ではありません。国民のため、日本の未来のための医学部をつくってほしい。その理念なくして、政権の方針ありきの代物になるなら、国民の理解は得られません。
[2015.9.1]
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