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コロナ禍2年半で直面する物価高、中小企業はマインドチェンジして補助金の積極利用を

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9月の消費者物価指数はプラス3%、31年ぶりの高水準
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10月15日、岸田文雄首相は東京都内の精密機械部品を製造する町工場や商店街を視察し、中小企業や小規模事業者と意見交換を行ないました。街なかでは、長引くコロナ禍での苦労にくわえて円安と物価高に不安を感じているという声が聞かれました。

総務省が10月21日に発表した9月の消費者物価指数(生鮮食品を除く、2020年=100)は総合指数が102.9となり、前年同月比で3.0%上昇しました。消費増税時を除くと、1991年8月以来、31年1ヶ月ぶりに高い上昇率です。生鮮食品を含む総合指数は同じく3.0%の上昇率でした。
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他の主要国では日本に比べて高い上昇が続いています。9月の消費者物価指数(生鮮食品を含む、前年同月比)を見てみると、アメリカは8.2%の上昇率、イギリスは10.1%、ユーロ圏では9.9%でした。加速するインフレを抑えようと各国の中央銀行が利上げを行なって金融の引き締めをはかっていますが、インフレ率の上昇は止まりません。
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日銀が13日発表した9月の企業物価指数(速報値、2020年平均=100)の上昇率は前年同月比9.7%でした。消費者物価が上がってきてはいるものの、高い上昇率が続く企業物価との差は大きく広がったままです。原材料やエネルギー価格の高騰などで膨らんだコストは、まだ価格転嫁できていません。

政府はさまざまな支援策を講じてはいるが...
2020年4月7日、政府が新型コロナウイルス感染拡大に対し「緊急事態宣言」を発令しておよそ2年半が経過しました。今年の2月にはロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まり、いまも解決の出口が見えないまま攻防が続いています。日本経済は90年代半ばから慢性的なデフレに苦しんできましたが、ここに至って突然のインフレに直面したのです。

安倍~菅~岸田の3つの政権が感染症のパンデミック(世界的大流行)とウクライナ紛争という歴史的な非常事態に対応してきました。経営難にあえぐ中小企業にさまざまな支援策を講じています。

物価高と円安が同時進行するなか、中小企業も価格転嫁と賃上げを進めていかなければなりませんが、「言うは易く行うは難し」です。先日、NHKの討論番組で株式会社デリモ(埼玉県草加市の食品メーカー)の栗田美和子社長が次のようなことを話していました。

「1000万円、5000万円といった補助金をもらって設備投資をしようとしても、申請作業にあてる人材がいないため、準備に数ヶ月かかり、募集の締切りに間に合わない。大手企業には補助金を取れる人材がいるが、中小企業にはいない。このままでは大手は補助金で潤うけれども、中小は何もできないまま倒産してしまう」

経済状況が激しく変化しているときほど、中小企業は思い切った事業再構築に取り組んで生き残りをはかっていかなければならないはずなのに、そのための補助金が使い勝手の悪い仕組みのせいで受け取れないのは非常にもったいない。デリモの従業員数は300名以上だそうですから、もっと小さい規模の企業にとって補助金を受け取るまでのハードルは相当高いでしょう。

政府の支援のやり方には、まだまだ改善の余地がありそうです。中小企業の生の声を取り入れて、いま策定中の総合経済対策に反映してほしいと思います。

中小企業はマインドチェンジして補助金を積極的に取りにいく
中小企業も、政府が支援のやり方を洗練させるのを待っている余裕はありませんから、補助金を積極的に利用するために動く必要があります。前述した栗田社長の話では、補助金申請の準備をするための人材が不足しているとのこと。

例えば、事業再構築補助金を申請するためには、
・事業計画書
・認定経営革新等支援機関・金融機関による確認書
・コロナ以前に比べて売上高が減少したことを示す書類
・コロナ以前に比べて付加価値額が減少したことを示す書類
・決算書
・従業員数を示す書類
といった必須書類のほか、支援の内容に従って必要な書類を作成・提出し、審査を受けなくてはいけません。ぎりぎりの人員で業務を回しながら不備なく書類を準備するのは至難の業でしょう。

うちの会社では無理だと諦める前に、知恵を貸してくれるのが中小企業活性化協議会です。「『中小企業活性化協議会』発足、中小企業の相談窓口がひとつに統合」(2022.4.14配信)の記事で紹介したように、各都道府県の商工会議所などに窓口があり、アドバイスや専門家の紹介などをしてくれます。まずは相談してみましょう。

すこし前までは「コロナさえ収まれば経済は元通りになる」という楽観論もありました。しかし実際は、物価高は進んで、円安は止まりません。中小企業の経営者の皆さんも、現在のような危機的状況にいつでもまたなり得るのだという考え方を前提にして経営方針を立てていくべきでしょう。マインドチェンジです。大企業ならば工場の一部を移転したり事業の一部を売買したりして自分の身を変化させることで危機に対応できますが、中小企業はそうはいきません。

日頃から取引先の企業や金融機関、商工会議所などと連携してリスクに備えるという発想が必要です。補助金申請といった場面でも同様です。単なるセーフティーネットとしてではなく、事業を成長させて会社を強くするのだという姿勢でどんどん利用していきましょう。急激な変化にも耐えられる強い企業になることは、地域全体の経済を強くすることにもつながります。


[2022.10.24]

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八木宏之プロフィール
セントラル総研・八木宏之
株式会社セントラル総合研究所 代表取締役社長。連帯保証人制度見直し協議会発起人。NPO法人自殺対策支援センターLIFE LINK賛同者。
昭和34年、東京都生まれ。大学卒業後、銀行系リース会社で全国屈指の債権回収担当者として活躍。平成8年、経営者への財務アドバイスなどの経験を活かし、事業再生専門コンサルティング会社、株式会社セントラル総合研究所を設立。以来14年間、中小企業の「事業再生と敗者復活」を掲げ、9000件近い相談に応えてきた。
事業再生に関わる著書も多く出版。平成22年5月新刊『たかが赤字でくよくよするな!』(大和書房)をはじめ、『7000社を救ったプロの事業再生術』(日本実業出版)、『債務者が主導権を握る事業再生 経営者なら諦めるな』(かんき出版)、平成14年、『借りたカネは返すな!』(アスコム)はシリーズ55万部を記録。その他実用書など数冊を出版している。
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