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休業・廃業・解散が25,138件、倒産の2.2倍/景気低迷で中小企業の事業継続困難な時代

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休廃業・解散:建設、サービス、小売・卸業で全体の8割
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帝国データバンクが5月19日に発表した「休廃業・解散動向調査」によると、平成22年度(平成21年4月~22年3月)に休業や廃業、 解散した企業は25,138件となり、前年から2.5%減ではあ るものの倒産件数の2.2倍と依然高い水準となっています。同社の定義で休廃業は、倒産とは異なり総資産が負債を上回り事業活動を停止し、休廃業届を官公庁などに提出している状態であり、夜逃げ状態に ある事業所も含まれています。一方、解散は商業登記などで企業の解散が確認されたケースを指しており、いづれも倒産には含まれずメディアでもあまり報道されていない数字であるものの、これが実態なのです。
休廃業・解散した企業を業種別で見ると建設業が8,593件と構成比 34.2%を占め、前年の17.4%から約2倍に増加。次いでサービス業の同比16.1%、小売業が15.5%、卸売業の13.5%となっています。建設業は公共工事などの激減のあおりを受け依然厳しい状況が続き、雇用・減収不安から消費低迷による小売り、サービスへの支出が抑えられている裏付けになった結果となっています。

36,000社が事業活動停止、さらに被災企業も加えれば・・
帝国データバンクのデータの元となるのは、同社のデータベースで138万社から削除されたデータのうち平成18年から22年に休廃業・解散に至った事業者を集計しています。実際の日本の法人企業数は、国税局の実態調査では平成20年3月現在、259万4,214社と同社データベースの約2倍あり、休廃業・解散企業も倍となると予測できます。日本の法人企業の規模を見ると資本金が1,000万円未満の企業は全体の56%を占め、1,000万円以上1億円未満の企業は 42.4%と、資本金が1億円に満たない企業は98.4%にも達します。休廃業・解散企業したほとんどの企業は、中小・小規模・零細企業なのでしょう。
平成20年のリーマン・ショックから景気低迷によって企業は売上減少、資金繰り悪化と、政府は金融機関やリース業者への負担を軽減させるために中小企業金融円滑化法によるリスケジュール(条件変更)信用保証協会セーフティネット融資など金融支援を延長してきました。その効果から企業の倒産は減少し平成23年度は11,496件と前年比 10.6%減となりました。帝国データバンクのデータでは休廃業・解散した企業と合わせ約36,000社が前年度、事業活動を停止しましたが、その2倍は推測され、さらに今回の調査に東日本大震災の企業は反映されていない事からさらに拡大してると思われます。

輸出24.4%増に川下の中小企業にも恩恵
企業の倒産が減少した理由に市場を海外に向け生産品を輸出、売上を拡大した企業もあります。財務省の貿易統計によると平成23年度の輸出総額は67兆3,996億円と前年度54兆1,706億円の24.4%増と急拡大しました。政府や大企業が一体となって生産品を輸出 拡大、その川下に存在する2次、3次下請けとなる中小企業にも波及効果の恩恵を受けることができたのでしょう。昨年、輸出産業は急激な円高により利益減少に陥る企業もありましたが、日銀の包括的金融緩和策などによって黒字決算を迎える企業が多く見込めました。しかし3月11日、東日本大震災によって状況は大きく変わりました。直接被害にあった 企業や、取引先関係によって二次被害にあった企業など企業の被 害は連鎖し始めました。今後、震災の影響が出ると思われる企業も今は、政府の金融支援や優遇措置などでつなぎ止め、資金繰りを見直し、 デューデリジェンス(財務精査)で財務状況をしっかり把握、事業計画をしっかり練りたいところです。
震災前の状況は健全経営だったのか、売上減少であったなら利益の出る事業へ転業も考えなければなりません。報道されるTPP(環太平洋経 済連携協定)もEPA(経済連携協定)、FTA(自由貿易協定)も、市場を海外に見据え「ヒト・モノ・カネ」の流れを円滑にする協定です。産業も農林漁業も変革のときです。

街の居酒屋さんが従業員5千人超えの大企業に
資金繰りが悪化した中小企業はセーフティネットや自治体など制度融資で、売上減少でも事業継続できる体制を整えなければなりません。時には従業員を休業させ、厚生労働省の雇用調整助成金の支援も受ける事も考えなければなりません。今は利益の出る事業へ、市場の需要をしっかりつかみ事業継続のため自社の得意分野を検証するときです。
外食チェーンを展開するワタミ株式会社(東京都大田区羽田1-1-3 代表取締役社長:桑原 豊氏)は5月19日、風力発電事 業に参入と発表しました。ワタミは昭和59年、居酒屋「つぼ八」のフランチャイズ店として東京・高円寺の店舗からスタートし、その後、幅広い食産業に拡大し、農業や介護産業へ参入してきました。発表では、 風力発電で自社が運営する店舗や介護施設の電力を担うとしています。 高円寺の居酒屋さんが今や従業員5,000人を超える大企業となりました。付加価値のある農業、新成長戦略とされた介護産業に新エネルギーの風力発電と、市場の需要をしっかり見つめ供給によって拡大したのでしょう。
需要があって供給することができれば事業として成り立ちますが、供給がすでにあれば需要のある市場を見つけるしか事業は成り立ちません。 政府の震災復興に向けた1次補正予算によって中小企業への政策、支援策は発表され、8月には巨額となる2次補正予算案も成立が見込まれま す。市場や情報はいち早くキャッチし事業継続に役立てたいところです。福島第1原発の収束、風評被害、電力供給不足、消費マインドの低下。これらが1つ1つ解決に向かえば薄日は再び差してきます。

▼厚生労働省:雇用調整助成金

[2011.5.24]

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八木宏之プロフィール
セントラル総研・八木宏之
株式会社セントラル総合研究所 代表取締役社長。連帯保証人制度見直し協議会発起人。NPO法人自殺対策支援センターLIFE LINK賛同者。
昭和34年、東京都生まれ。大学卒業後、銀行系リース会社で全国屈指の債権回収担当者として活躍。平成8年、経営者への財務アドバイスなどの経験を活かし、事業再生専門コンサルティング会社、株式会社セントラル総合研究所を設立。以来14年間、中小企業の「事業再生と敗者復活」を掲げ、9000件近い相談に応えてきた。
事業再生に関わる著書も多く出版。平成22年5月新刊『たかが赤字でくよくよするな!』(大和書房)をはじめ、『7000社を救ったプロの事業再生術』(日本実業出版)、『債務者が主導権を握る事業再生 経営者なら諦めるな』(かんき出版)、平成14年、『借りたカネは返すな!』(アスコム)はシリーズ55万部を記録。その他実用書など数冊を出版している。
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