2022春闘、政府主導の「賃上げ」は景気回復につながるか?
今年の焦点はデフレ脱却を掲げる政府主導の「賃上げ」
1月25日より「経団連労使フォーラム」が東京都内で開かれ、2022年の春闘が事実上始まりました。昨年は多くの労組がベアよりも雇用維持を優先しましたが、今回は一転、賃上げが焦点になりそうです。昨年1%台だった賃上げ率が、どこまで回復するのかが注目されています。
強まるインフレ圧力とスタグフレーションに対する危機感
現在、インフレ圧力がこれまでになく強くなっています。コロナ禍で制限されていた経済活動が再び活発化し、需要が急激に増えて供給が追いつかず、物価が上がっているのです。
このまま物価の上昇が続き、賃金が上がらないままだと、日本は「スタグフレーション」で苦しむことになりかねません。スタグフレーションとは、経済の停滞(Stagnation)と物価上昇(Inflation)が同時に起きている状態を指します。
いったんスタグフレーションに陥れば、大きく落ち込んだ消費者の購買力は容易に回復しないどころか、生活困窮者が増えてしまいます。とくに生活必需品の価格上昇は、中低所得層ほど影響が大きくなります。
政府主導の賃上げ推進と「賃上げ促進税制」
そこで、岸田首相は昨年秋、業績がコロナ前の水準に回復した企業は3%を超える賃上げを実現するよう経済界に協力を呼びかけました。さらに、政府が閣議決定した「令和4年度税制改正大綱」では「賃上げ促進税制」が見直されました。
賃上げ促進税制は、これまであった所得拡大促進税制の仕組みを強化したものです。これによると、法人税から差し引く控除率を大企業で最大30%、中小企業で最大40%に引き上げるとしています。(経済産業省「税制について」)
中小企業の場合、図表1のように、
(1)雇用者全体の給与等支給額が前年度比で2.5%以上増加 → 30%税額控除
(2)雇用者全体の給与等支給額が前年度比で1.5%以上増加 → 15%税額控除
(3)教育訓練費が前年度比で10%以上増加 → 10%税額控除
のうち、要件(1)と(3)を満たすと40%の税額控除、(2)と(3)を満たすと25%の税額控除が与えられます。
コロナで弱った中小企業の賃上げは?
経団連も賃上げには前向きな姿勢を示し、一部の企業は賃上げ実施を決めています。けれども、もともと資金繰りが厳しいうえコロナ禍で体力を削られた企業が多いのも事実です。とりわけ就労者の約7割を占める中小企業従事者の賃上げを実現するのは、なかなか簡単にはいかないでしょう。
●関連記事:「賃上げより雇用維持重視で春闘スタート!業種により要求に明暗」[2021.2.26配信]
[2022.2.3]
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