「2012年版ものづくり白書:日本の製造業強みは「現場力」:手本はアップルの「付加価値」
日本の製造業の強みは「現場力」
日本は、「ものづくり」「技術」大国として高度経済成長を遂げ世界をリードしてきましたが、自動車や電機産業など近年の新興国の技術向上や歴史的円高で海外での競争力は急激に低下しています。経済産業省が今月発表した「2012年版ものづくり白書」によると、日本の製造業が技術力を持つ分野で世界シェアを落とし、収益を上げることが困難になっていると危機感を表しています。
新たな産業となりうる再生可能エネルギー分野では、新興国企業に追い上げられ価格競争に巻き込まれようとしています。白書は、震災によるサプライチェーン(供給網)からの早期復旧にあるように日本の製造業の強みは「現場力」にあるとし、世界市場の情報収集や現地ニーズに合った企画や研究開発、人材育成が重要と提言します。
技術優位が付加価値を低下させる原因に?
さらに白書では、製品の企画、開発に特化して業績を伸ばす米アップルのように付加価値を高める経営戦略の策定を促しています。同社創業者の故スティーブ・ジョブス氏の発想と現場力、企画力は、本業のパソコンから携帯音楽プレイヤーやスマートフォンを生み出し世界的シェアを獲得するまでに事業拡大を遂げました。
ものづくりにおいて先進国と新興国の競合が激化していることで日本の製造業は、結果としてものづくりから得られる付加価値が低下。このような中、アップルは自社が付加価値を確保する仕組みを構築し、アジア新興国に積極的にものづくりを委託し収益を上げるモデルをつくり出し、多くの企業がアップルに続きました。
ものづくり行わないアップルの高い収益率
ものづくりは、単なる生産から企画やマーケティング、研究開発、アフターサービスなどが収益を確保できる重要な位置を占めるようになりました。アップルが販売するスマートフォン「iPhone4」では、ものづくりを行わないアップルが付加価値を半分近く獲得し、組み立てだけを行う中国は1割も獲得できていません。
米国のグローバル企業は、製品の製造、組み立てをコストの安いアジアへ委託。投資、生産を大規模化し、核となる研究開発や企画などに注力を注ぎ販売効率を向上。結果として付加価値を向上させました。
後発企業の技術向上、製品化へのスピードが敗因の原因
日本の製造業は技術開発が世界トップレベルにありながらも、新興国企業の技術向上のスピード化によって収益に結びつく期間が短くなっています。製品開発後に普及、量産段階に入る時点で新興国などの後発メーカーは、その技術を活用しコストの安いアジアなどに大規模な設備投資、大量生産体制を整備し製品化への期間を大幅に短縮。開発企業は、莫大な研究開発費が収益に繋がらないという異常事態が生じています。
この現象は、テレビや半導体、液晶、リチウムイオン電池など経済成長を期待された分野で多発しました。付加価値をいかに確保するかがこれからのものづくりに必要になってきます。
[2012.6.27]
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