出光興産と昭和シェル石油が経営統合に向けて合意。2010年以来の大型業界再編で、石油国内市場の縮小問題に一石を投じることになるか。
石油業界の2強時代の幕開け
石油元売り業界2位の「出光興産」と5位の「昭和シェル石油」が、経営統合に向けて本格的な協議に入ることで合意しました。実現すれば、両社の売上高の合計は約7・6兆円。最大手のJXホールディングス(約10・9兆円)に迫り、「2強」時代が始まります。石油業界の大型再編は、2010年、新日本石油と新日鉱ホールディングスの経営統合以来です。
出光は、昭和シェル株式の約33%を、英オランダ石油メジャーのロイヤル・ダッチ・シェルから1691億円で買い取ります。出光は、昭和シェルの筆頭株主になります。「出光の子会社にはならない」などの反発が強く、何度も暗礁に乗り上げた交渉が、ようやく決着しました。
ガソリンの国内需要は10年で1割減っている
石油業界は現在、国内市場の縮小問題に直面しています。自動車の燃費向上(エコカーの急速な普及)、少子高齢化や人口減少、過当競争、原油価格の急落などが重なり、ガソリンの国内需要はこの10年で1割以上減りました。好転材料は乏しく、出光の月岡隆社長が語るように、「(規模の拡大による)経営基盤の強化や、経営の効率化、総合エネルギー産業へ進化する」ことが急務でした。今後は、原油の購入量を増やすことで産油国との交渉力を高めたり、稼働率が低い設備の統廃合を進めたりが可能になります。メリットの大きい統合です。
1985年に「昭和石油」と「シェル石油」が統合し、「昭和シェル石油」が誕生するまで、国内の石油元売り大手は10社ありました。今回の経営統合で、それが4社にまで集約されます。業界再編には、さらに拍車がかかるでしょう。実際、3位の「東燃ゼネラル」は、収益性が低い事業の整理を進める可能性がうわさされています。4位のコスモ石油も、10月には持ち株会社に移行する予定で、部門ごとに別々の会社を置き、他社との提携を進めやすくします。「国内でしっかりした収益基盤を獲得して世界に乗り出す」(昭和シェルの亀岡剛社長)。その思いは、生き残りをかける他社も同じです。
[2015.8.22]
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