為替デリバティブ倒産増加!問題解決に金融ADRへの申請、前年の2倍1,981件に急増
サブプライムから5年で40円の円高:為替差損で倒産増加
サブプライム問題が表面化した平成19年を境に為替レートは円高傾向へ進み、5年間で約40円も円高になりました。さらに欧州の債務危機問題によりユーロに対しても円高となり、先月末には1ユーロ95円を割り込み全面的な円高が進んでいます。
現在の円高水準は、多くの企業にとって想定外のレートであり、為替デリバティブ取引(金融派生商品)など為替差損による企業倒産の数も前年を上回っています。
本業で利益を出しても為替差損で利益は消失
為替デリバティブは、あらかじめ決められた為替レートで、5年から10年外貨を売買する契約。5年前に1ドル120円で金融期間と契約を結んだ場合、現在の1ドル80円では輸入業者などに40円の損失が発生することになります。「リスクの回避や、円高なら政府介入」などの勧誘で契約した企業は、昨年からの急激な円高傾向によって毎月決済時には大きな為替差損がのしかかります。
本業で利益を出しながらも、為替デリバティブでの損失が上回り、結果として倒産に至るケースが目立ってきています。
デリバティブ倒産は上半期16件も、保有企業は1.9万社
帝国データバンクによると今年上半期(1月~6月)の円高関連倒産は51件判明しており、前年同期の24件から112.5%の増加となりました。このうち為替デリバティブの損失による倒産は、全体の3割を占める16件。上半期は16件で済んでいるものの、金融庁の発表では為替デリバティブを保有する企業は約1万9,000社。今後も円高傾向が続けば為替差損の負担から次々に倒産が発生する可能性が高く懸念されます。
金融商品は「自己責任」に「売り手責任」は?
為替デリバティブなど金融取引におけるトラブルを迅速に解決する金融ADR(裁判外の紛争解決手続き)は、利用者と金融機関の問題を迅速に解決。全国銀行協会や生命保険協会など8団体が窓口となり、紛争を解決します。金融庁によると平成23年度、金融ADRの申請件数は、前年度から2.3倍の1,981件に上りました。
「投資は自己責任」と言われますが、金融商品に深い知識のないまま甘い言葉で契約してしまった「売り手責任」も問われています。全面的な円高が続くなか、金融庁は為替差損による資金繰り不安に融資を要請するものの、実態が見えてきていません。
▼金融庁:金融ADR指定紛争解決機関一覧
●関連記事:為替デリバティブ!メガBank・過去の遺産:金融ADR申立て企業の、Bank負担和解45%は多い?少ない?[2011.9.20配信]
[2012.8.3]
トラックバック(0)
このブログ記事を参照しているブログ一覧: 為替デリバティブ倒産増加!問題解決に金融ADRへの申請、前年の2倍1,981件に急増
このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.h-yagi.jp/mt5/mt-tb.cgi/969
コメントする