非課税制度導入も内需潤わず、海外子会社利益の国内還流18%減

止まらない企業海外拠点シフト株式会社日本政策投資銀行が8月に行った「平成21~23年度設備投資計画調査」によると、平成22年度の大企業(資本金10億円以上)の国内設備投資計画は製造、非製造業ともに全産業で3年ぶりの増加(平成21年度計画比6.8%増)となりました。平成21年度が16.7%減と昭和31年調査開始以来最大の減少となっていることから平成22年度は緩やかな回復にとどまると見えます。
海外の設備投資35.1%増、3年ぶりの増加
一方で海外における設備投資計画では全産業で同比35.1%増と国内投資額を大きく上回り、3年ぶりの増加となっています。地域別に見ると中国を含むアジアで同比24.1%減から37.4%増、北米で55.4%減から22.3%増と大きく増大し、製造業だけを見れば海外投資が43.9%増と国内投資の5.9%増と、海外へ拠点をシフトする動きが活発になっています。
95%非課税導入の効果は?
経済産業省は海外の日本企業子会社が利益を過度に海外に保留している現状を踏まえ、平成21年4月、税制改正により、日本企業が海外子会社から受け取った配当について95%分を法人税等がかからない非課税制度を導入しました。これは国内資金還流の促進、研究開発投資などを活発化、雇用の拡大の狙いからの導入でした。制度導入後約1年半が経過し、目的の資金還流して国内では潤ったのでしょうか?
還流1兆177億円、前年比で18.7減、効果イマイチ
報道によると、平成22年4月から7月の日本企業の海外子会社からの国内への還流が累計で1兆177億円、前年同期比で18.7減となったと報じました。日本国内では効果的な資金使途が乏し過ぎるのか、成長資金は海外子会社に蓄積されたままで国内内需の活性化には至っていないようです。
投資意欲をもたせる支援策
日銀の統計によると金融機関を除く民間企業の現預金残高は、平成22年6月末で200兆円を超えており、利益を生む海外投資には積極的ですが、日本国内では効率的な投資先がないとの判断から手元資金として温存しているようです。経済産業省の旗振りで導入したせっかくの非課税制度も、あまりに乏しい国内経済に限定的だったようです。残念ですが国内の景気浮揚効果には至らないようです。
9月20日の当ブログ記事「政府主導:日本のお家芸、金型成形技術を保存へ」では、大企業を対象にした金融支援政策や海外販路拡大促進などの政策が中堅企業へも取り込まれてきたと書きましたが、次は、国内を活性化させる主役である中小企業への支援策が必要なのです。内需が潤えば市場への投資、雇用の拡大にも繋がるのです。
デフレ脱却へ加速
民主党代表選では「雇用の拡大」を連呼した菅首相。その後も雇用促進を重視する姿勢を強調し、非正規雇用から正規雇用への切換え奨励金の援助や育児支援、障害者雇用にも取り組んでいます。
現実には円高、株安傾向が続き、目に見えて雇用拡大の効果は現れません。しかし、代表選決定後の日銀による為替介入などデフレ脱却に向けて動き出してきました。日銀の金融緩和の効果が出始める本年後半に非課税制度導入の投資意欲の喚起の動きを早めて一気にデフレ脱却してもらいたいものです。
[2010.9.21]
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